福田紘也作品評 2016-2023

福田紘也が新国立劇場バレエ団を退団した。コンセプチュアルなアプローチができるバレエ団唯一の振付家である。今後は裏方でその優れたクリエイティビティを発揮することになるが、機会を見て振付作品を発表してほしい。これまでの作品評は以下の通り。 『福…

東京バレエ団✕新国立劇場バレエ団 団員振付公演 2023

東京バレエ団と新国立劇場バレエ団が踵を接して、所属団員による振付作品集を上演した。前者は「Choreographic Project 2023」(3月18, 19日 東京バレエ団 Aスタジオ)、後者は「DANCE to the Future 2023」(3月24, 25昼夜, 26日 新国立劇場小劇場)である…

NBAバレエ団「バレエ・リュス・ガラ」2023

標記公演を見た(3月4日昼夕 新国立劇場中劇場)。NBAバレエ団ではバレエ史家の故薄井憲二氏監修のもと、バレエ・リュス・レパートリーを継続的に上演してきた。今回はその中から、フォーキン振付『レ・シルフィード』と『ポロヴェッツ人の踊り』(共に09年…

スターダンサーズ・バレエ団「MISSING LINK」2023

標記公演を見た(3月2日 東京芸術劇場 プレイハウス)。「MISSING LINK」は公演名で、第1部『01』、第2部『Degi Meta go-go』の2作品によって構成される。前者は新作、後者は 1997年『KATSUO NI SILAGA』として初演され、2002年にはドイツ公演も行なわれ…

2月に見た公演 2023

2月に見た公演について、メモしておきたい。 ● 全国共同制作オペラ『田舎騎士道』+『道化師』(2月3日 東京芸術劇場 コンサートホール) 演出は元宝塚歌劇団演出家の上田久美子(美術、大阪弁字幕も)、振付は『田舎騎士道』が前田清実、柳本雅寛、『道化…

日本バレエ協会『ドン・キホーテ』2023

標記公演を見た(2月4日 東京文化会館 大ホール)。都民芸術フェスティバル参加公演。新振付・演出はマシモ・アクリ、振付補佐には堀本美和、バレエ・ミストレスは楠元郁子、千歳美香子、バレエ・マスターに奥田慎也という布陣。主要キャストからアンサンブ…

1月に見た公演 2023

1月に見た公演について、メモしておきたい。 ● ケダゴロ『ビコーズカズコーズ』(1月12日 東京芸術劇場 シアターイースト) 振付・構成・演出は下島礼紗。殺人を犯し、時効成立の21日前に逮捕された福田和子をモチーフとした作品である。女囚とホステス・ア…

12月に見た公演 2022

2022年12月に見た公演について、メモしておきたい。 ● ブラレヤン・ダンスカンパニー『LUNA』(12月3日 KAAT 神奈川芸術劇場 ホール) YPAMディレクション。台湾先住民 パイワン族出身の振付家ブラレヤン・パガラファの振付で、台湾の様々な先住民族と漢民族…

山崎広太 劇場プロジェクト『机の一尺下から陰がしのび寄ること』2022

標記公演を見た(12月28日 BankART Station)。山崎広太による日本では15年ぶりのフルイヴニング公演とのことだが、昨年末には2日間にわたる13時間公演を実施している(2021年12月25, 26日 スパイラルホール)。この時は観客がダンサーを3方で囲む体育館形…

2022年公演総括

2022年(含21年12月)に見た舞踊公演及び、印象的な振付家・ダンサーを列挙する。 ■ 12月(21年) ・Kバレエカンパニー『くるみ割り人形』 ・「DaBY パフォーミングアーツコレクション」岡田利規、酒井はな、中村恩恵、柿崎麻莉子 ・勅使川原三郎『ガドルフ…

笠井叡『櫻の樹の下には―カルミナ・ブラーナを踊る―』2022

標記公演を見た(11月23日 吉祥寺シアター)。昨年2月に続き、笠井叡が5人の男性ダンサーに振り付ける一晩物である。大植真太郎、島地保武、辻本知彦、森山未來、柳本雅寛(五十音順、辻本のシンニョウは一つ点)は、全員が振付家、踊り盛りで男盛り。荒武…

福田一雄卒寿記念特別公演「バレエの情景」2022

標記公演を見た(11月20日 東京文化会館 大ホール)。70年にわたり日本バレエ界を牽引してきた指揮者福田一雄の、卒寿を記念するガラ公演である。福田と縁の深い国内5つのバレエ団が集結した(出演順に、東京シティ・バレエ団、牧阿佐美バレヱ団、東京バレ…

日本バレエ協会「バレエクレアシオン」2022

標記公演を見た(11月15日 新宿文化センター)。文化庁「次代の文化を創造する新進芸術家育成支援事業」の一環である。プログラムは、髙原伸子振付『沈黙の中庭』、池上直子振付『牡丹灯篭』、下村由理恵振付『氷の精霊』によるトリプル・ビル。全員女性だが…

新国立劇場バレエ団『ジゼル』新制作 2022 ②

標記公演を見た(10月21, 22日昼, 23, 28, 29日昼 新国立劇場 オペラパレス)。7日間9公演、主役キャストは5組。バレエ団の総力を挙げた新制作である(作品については ①)。 ジゼルは見た順に、小野絢子、柴山紗帆、米沢唯、木村優里、池田理沙子。それぞ…

新国立劇場バレエ団『ジゼル』新制作 2022 ①

標記公演を見た(10月21, 22日昼, 23, 28, 29日昼 新国立劇場 オペラパレス)。同団は劇場開場翌年の98年にセルゲーエフ版『ジゼル』を導入。以降4回の再演を重ねてきた。今回は24年振りの新制作である。演出:吉田都、改訂振付:アラスター・マリオット、…

佐東利穂子『告白の森』2022

標記公演を見た(10月22日 KARAS APPARATUS)。『泉』(19年)、『ノクターン』(21年)に続く自作自演作。1作目は自分の感覚を試すような手探りの感触があり、ある種の瑞々しさを湛えていた(コチラ)。2作目は勅使川原三郎の音楽構成だったため、勅使川…

バレエシャンブルウエスト『眠れる森の美女』2022

標記公演を見た(10月9日 J:COM ホール八王子)。本作はすでに「清里フィールドバレエ」で上演されているが、劇場公演は初となる。今村博明総監督によると「見られる野外と見せる劇場」の違いがあり、「照明、舞台装置、ダンサーの立ち位置、体の方向性、表…

スターダンサーズ・バレエ団『The Concert』他 2022

標記公演を見た(9月24日 東京芸術劇場 プレイハウス)。バランシン振付『スコッチ・シンフォニー』(NYCB52年 / SDB88年)、ロビンズ振付『牧神の午後』(NYCB53年 / SDB91年)、ロビンズ振付『コンサート』(NYCB56年 / SDB初演)による1950年代トリプル・…

牧阿佐美バレヱ団『飛鳥 ASUKA』2022

標記公演を見た(9月4日 東京文化会館 大ホール)。昨年10月28日に87歳で逝去した牧阿佐美の追悼公演。公演直後の9月6日には、バレヱ団と、牧が長年舞踊芸術監督を務めた新国立劇場の運営財団による「お別れの会」が、新国立劇場 中劇場で盛大に執り行われ…

小林紀子バレエ・シアター「アシュトン・マクミランプログラム」2022

標記公演を見た(9月3日 新国立劇場中劇場)。アシュトン振付『レ・パティヌール』(SWB37年 / 団98年)、マクミラン振付『ザ・フォーシーズンズ』(RB75年 / 団初演)による英国バレエダブル・ビル。それぞれマイヤベーアのオペラ『預言者』のバレエ曲(他…

『わたしは幾つものナラティヴのバトルフィールド』2022

標記公演を見た(9月1日 彩の国さいたま芸術劇場 小ホール)。主催・企画・制作:彩の国さいたま芸術劇場、テキスト・演出:岡田利規、共同振付:岡田+湯浅永麻+太田信吾、出演:湯浅+太田による。岡田は公演プログラムのコメントで次のように語っている。…

日本バレエ協会「全国合同バレエの夕べ」2022

標記公演を見た(8月12、14日 新国立劇場 中劇場)。文化庁委託事業「次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」の一環である。今年は全国13支部のうち7支部が参加、東京地区、本部作品を含め、11作品が出品された。古典は4作、古典改訂は3作、創作は4作…

「NHK バレエの饗宴 2022」

標記公演を見た(8月13日 NHKホール)。昨年はコロナ禍ということもあり、国内4つのバレエ団が得意のレパートリーを持ち寄る形式だったが、今回は「饗宴」本来の姿に戻っている。コロナ禍は相変わらずで、出演者の変更を余儀なくされたものの、内外のダンサ…

7月に見た公演 2022

● 鈴木ユキオ『刻の花 トキノハナ』『moments』(7月1日 シアタートラム) 『刻の花』は昨年の「中央線芸術祭」で発表した作品を再創作したもの。写真家 八木咲の写真と、八木が舞台上で撮ったライブ写真と共に踊る鈴木のソロダンスである。『moments』は安…

NBAバレエ団『ラ・フィユ・マル・ガルデ』2022

標記公演を見た(7月9日昼夜 新国立劇場 中劇場)。併演はティペット振付『ブルッフ ヴァイオリン協奏曲第1番』。ニジンスカ版『ラ・フィユ・マル・ガルデ』は、2010年バレエ団に導入された。舞踊史家で顧問だった故薄井憲二氏の監修による。翌年再演、今回…

5, 6月に見たダンサー2022

● 水城卓哉 @ 貞松・浜田バレエ団「バレエ・リュスの世界」(5月22日 あましんアルカイックホール) プログラムは、フォーキン振付『レ・シルフィード』、ロビンズ振付『牧神の午後』、ゴレイゾフスキー原振付/貞松正一郎振付『ボロヴェッツ人の踊り』によ…

井上バレエ団「バレエの潮流Ⅱ~ロマンティックからコンテンポラリーまで」2022

標記公演を見た(6月19日昼夕 東京芸術劇場プレイハウス)。「バレエの潮流」の第2弾。前回は2017年「ブルノンヴィルからプティパまで」という副題で、『ラ・シルフィード』第2幕より、『ジェンツァーノの花祭り』よりパ・ド・ドゥ、『ラ・ヴェンタナ』よ…

5月に見た公演 2022

● 谷桃子バレエ団『眠れる森の美女』(5月4日昼夜 彩の国さいたま芸術劇場 大ホール) 2016年バレエ団初演のエルダ-・アリエフ版。監修のイリーナ・コルパコワはアリエフと綿密に話し合い、「この作品と、古いロマンティック・バレエのスタイルや雰囲気の特…

新国立劇場バレエ団『シンデレラ』2022

標記公演を見た(4月30日、5月1日、3日昼、5日 新国立劇場オペラパレス)。アシュトン版『シンデレラ』(48年/65年)は、1999年バレエ団に導入された。当時英国ロイヤル・バレエ プリンシパルの吉田都現芸術監督もゲスト出演し、アシュトン振付の魅力を伝え…

2、3月に見た振付家 2022

2、3月に見た振付家について、メモしておきたい。 ● 関口啓 @ 舞踊作家協会ティアラこうとう連続公演 No.220「Exploring Creation」(2月1日 ティアラこうとう 小ホール) 作品名は『Strategy』。出演はスターダンサーズ・バレエ団の小澤倖造、西澤優希に…