2017年公演総括

2017年の洋舞公演を振り返り、印象に残った公演・ダンサーを列挙する(含2016年12月)。


[バレエ]
新制作では、Kバレエカンパニーの『クレオパトラ』が抜きん出ている。企画・構成・演出・振付・台本は熊川哲也。記録の少ない歴史上の人物を主人公に、一から全てを創り上げ、演出家としての進境も示した。新国立劇場バレエ団は、イーグリング版『くるみ割り人形』を新制作。本邦初演は上演順に、NBAバレエ団がバランシンの『スターズ&ストライプス』、同じくフリードマンの『ロミオとジュリエット』、スターダンサーズ・バレエ団がフォーサイスの『N.N.N.N.』、東京シティ・バレエ団がショルツの『Octet』、井上バレエ団がブルノンヴィルの『ラ・ヴェンタナ』第2景、スターダンサーズがビントリーの『Flowers of the Forest』、小林紀子バレエ・シアターがマクミランの『La Fin du Jour』『春の祭典』、NBAがエイリーの『The River』を上演した。新国立が古典中心の王道を行くなか、井上のブルノンヴィル、小林のマクミラン、スタダンのバランシン、東京シティのショルツ、東京バレエ団ベジャールNBAの米国系と、各団が個性を打ち出している(順不同)。
国内振付家 ベテラン組は、故谷桃子の『ロマンティック組曲』(谷桃子バレエ団)、関直人の『くるみ割り人形』(井上)、松崎すみ子の『メリー・ポピンズ』(バレエ団ピッコロ)、法村牧緒の『ラ・バヤデール』改訂(日本バレエ協会)、深川秀夫の『ソワレ・ド・バレエ』pdd(新国立)、今村博明・川口ゆり子の『四季」(バレエシャンブルウエスト)。中堅組は上記の熊川に加え、伊藤範子の『バレエ・プリンセス』(チャコット)、同『Jeux d'enfants』(谷桃子バレエ団附属アカデミー)、石井竜一の『Sylvia』(日本バレエ協会)、木村和夫の『ハミング・バード』(東京)。若手では宝満直也の『天地創造』(SBA Jr.COMPANY)。


[モダン&コンテンポラリーダンス]
モダンダンスでは、正田千鶴が『サーファー―可能の領域―』(東京新聞)、柳下規夫が『休日の朝のような季節』(同)と、相変わらず徹底して我が道を進んでいる。コンテンポラリーでは、国内唯一の劇場専属ダンスカンパニー Noismを率いる金森穣が、『マッチ売りの話』+『パッサカリア』、『Liebestod』を立て続けに発表し、力を見せつけた。
フリーのコンテンポラリー作家が、バレエ団やバレエダンサーに振り付ける公演も多かった。上演順に、(新国立所属だが)貝川鐵夫の『Space that Leads』(新国立劇場バレエ研修所)、勅使川原三郎のオペラ『魔笛』演出(東京)、山崎広太の『ふるはらひれふれれる』(井上)、中村恩恵の『ベートーヴェンソナタ』(新国立)、島地保武の『セクエンツァ』(谷)、柳本雅寛の『Nontanz』(同)、旧作だが名作の誉れ高い間宮則夫の『ダンスパステル』(早川バレエスタジオ)、近藤良平の『ねこ背』(日本バレエ協会)、中村の『7つの短編』(同)。この中で特に中村は、バレエダンサーと組むことで新境地を拓いている。また大植真太郎が児玉北斗のソロ公演で冷房を切るなど、破天荒な演出で野性を発揮した(ダンスがみたい!19)。海外振付家では、ダミアン・ジャレが『VESSEL』(横浜ダンスコレクション)、オハッド・ナハリンが『LAST WORK』(彩の国さいたま芸術劇場)で、東洋と西洋の融合を試みている。


[女性ダンサー]
上演順に、長田佳世のシンデレラ、小野絢子のシンデレラ、酒井はなのニキヤ、小野のスワニルダ、竹内碧のジュリエット、米沢唯(中村恩恵)、本島美和(同)、木村優里のリラ、関口祐美(チューダー)、井関佐和子(金森穣)、小野のジゼル、本島のミルタ、矢内千夏のミルタ、吉田都のタリオーニ、米沢のオーロラ(演出:伊藤範子)、木村の白雪姫(同)、米沢(宝満直也)、菅井円加のライモンダ、島添亮子(マクミラン)、伝田陽美(ベジャール)、中川郁のオーロラ、中村恵里(ナハリン)、小野のクララ、米沢のクララ、青山季可(ウォルシュ)、大橋真理(ベジャール)、番外は森下洋子のジュリエット、川口ゆり子のタチヤーナ、早川惠美子(間宮則夫)。中村と大橋はそれぞれバットシェバ舞踊団、ベジャール・バレエ・ローザンヌ来日公演での凱旋。


[男性ダンサー]
上演順に、橋本直樹のバート、齊藤拓のバジル、浅田良和のソロル、福岡雄大のフランツ、井澤駿のフランツ、菅野英男のコッペリウス、刑部星矢のロミオ、井澤のデジレ、大森康正(チューダー)、山本雅也のアリ、吉粼裕哉(金森穣)、渡邊峻郁のアルブレヒト、中家正博のハンス、足川欽也の女学院長、三木雄馬のアブデラクマン、島地保武(島地)、山崎広太のアフタートーク、清瀧千晴のブルーバード、山本雅也のプトレマイオス、遅沢佑介のオクタヴィアヌス、井出茂太(井出)、福岡のくるみ割り王子、井澤のねずみの王様、首藤康之中村恩恵)、山本隆之(同)、秋元康臣(ベジャール)。