ウィーン国立バレエ団「ウィンナー・ガラ」+「エトワール」

 休憩を含めて3時間15分の長丁場。コンテンポラリー系の作品が多く、プログラムとしては冗漫に思われる。個人的にはライトフットとレオンの『スキュー・ウィフ』、ロビンズの『イン・ザ・ナイト』が面白かった。動きに工夫があるのと、優れた音楽性ゆえ。
 ダンサーはほとんどロシア系のため、ルグリの薫陶の程はまだよく分からない。最もスタイルの近さを感じさせたのは、日本人の木本全優。パリのコンセルヴァトワールで学んでいるので不思議ではないが。前回のルグリ公演ではグッゲとブベニチェク作品で抜きん出た解釈力を見せた(知人の話ではAプロのブルノンヴィルが素晴らしかったとのこと、そうだろう)。今回は『イン・ザ・ナイト』の1楽章ソリストフォーサイス『精密な・・・』。前者では王子のような優雅さとラインの美しさにおいて、二人の先輩(ルグリ、ラツィク)を凌駕している。もちろんルグリのサポートは圧倒的。見ているうちに、新国のルグリと言われる山本隆之の、『アンナ・カレーニナ』における盤石のサポートを思い出した。一方木本のフォーサイスは、昨夏のコンテに比べるとさほどでもなかった。だが慎ましいステージマナーといい、好感度大。日本で踊って欲しい逸材。(4月24日 東京文化会館

 ついでに思い出したこと。1月の「エトワール」(2月2日 ゆうぽうとホール)では、ヤニック・ビトンクールが断トツですばらしかった。ガルニエの『オーニス』でオファルト、マニュネと三人で踊ったが、動きの鮮やかさが抜きん出ている。新国の「バレエ・アステラス」で藤井美帆と組んで出場したときも、断トツの美しさ。オペラ座の底力を見たと思ったのだが・・・実はビトンクールは英国ロイヤル・バレエ学校出身だった。その衝撃。ラインの美しさはやはりロイヤル系なのだろうか。フランス派はラインよりも、動きの正確さと機敏さ重視なのか。特に脚の。
 マチルド・フルステの腕使いも美しい。ポントワにみっちり仕込まれたと、『ダンス・マガジン』のインタヴューに答えていた。これも例外なのだろうか。木本の美しい腕は日本仕込み?