2016-01-01から1年間の記事一覧

12月のバレエ公演2016

12月のバレエ公演について、短くメモをする。 ●松山バレエ団『くるみ割り人形』(12月2日 東京文化会館) 清水哲太郎版。東京文化会館に移って、美術(川口直次)の豪華さが生きるようになった。舞台上の人数の多さも気にならなくなり、振付自体の創意工夫…

新国立劇場バレエ団『シンデレラ』2016

標記公演を見た(12月17, 18, 19, 23昼夜, 24, 25日 新国立劇場オペラパレス)。99年バレエ団初演、10回目のアシュトン版『シンデレラ』である。デヴィッド・ウォーカーの美術(87年 英国ロイヤル・バレエ)、沢田祐二の照明が、陰影に富んだ繊細な美を表現…

東京文化会館『眠れる美女』2016

標記公演を見た(12月10日 東京文化会館大ホール)。東京文化会館開館55周年・日本ベルギー友好150周年記念公演。川端康成の原作をクリス・デフォートの音楽、ギー・カシアスの演出、エンリコ・バニョーリ&アリエン・クレルコの美術(バニョーリは照明も)…

スザンヌ・リンケ「ドーレ・ホイヤーに捧ぐ」FT2016

標記公演を見た(12月9日 あうるすぽっと)。ドイツ表現主義舞踊の伝統を守るリンケ(トリーア市立劇場舞踊芸術監督)によるトリプル・ビル。標題のホイヤーとは、1911年ドレスデンに生まれ、1968年ベルリンで自死したモダン・ダンサー・振付家。表現主義舞…

2016年公演総括

2016年(含15年12月)の洋舞公演を振り返る(上演順)。今年は2作の重要な復元・改訂が行われた。江口隆哉の『プロメテの火』(プロメテの火実行委員会・現代舞踊協会)と橘秋子の『飛鳥物語』(牧阿佐美バレヱ団)である。前者は伊福部昭、後者は片岡良和…

新国立劇場バレエ団「ダンス・トゥー・ザ・フューチャー2016 オータム」

標記公演を見た(11月18、19、20日 新国立劇場小劇場)。今年3月、中劇場で同名企画が上演されたが、再び小劇場に戻っている。ただ、これまでとは異なり、「生え抜き振付家による作品集」の趣。レベルの揃った6作品(4振付家)に、ピアノ・トリオ(日替わ…

後藤早知子60th Anniversary Performance『スライス・オブ・ライフ』2016

標記公演を見た(10月31日 渋谷文化総合センター大和田さくらホール)。後藤早知子の記念公演だが、酒井はなのリサイタルでもある。後藤の酒井へのオマージュと、酒井の後藤への敬意が形になった公演。 作品は、ロマンティックな映像を交え、ジャズダンスや…

日本バレエ協会「バレエクレアシオン」2016【改訂】

標記公演を見た(11月5日 メルパルクホール)。文化庁平成28年度次代の文化を創造する新進芸術家育成事業の一環で、主催は文化庁と公益社団法人日本バレエ協会。バレエを基盤とした振付家を育成する、貴重な場となっている。 今年度は3人の振付家による作品…

新国立劇場バレエ団『ロメオとジュリエット』2016

標記公演を見た(10月29、30日、11月3日 新国立劇場オペラパレス)。新国立はマクミラン版『R&J』を01年に初演、今回で4度目の上演となる。その特徴は、まずシンプルであること。余計な背景説明を省いて、若い二人の恋と死に焦点を当てる。先行版のラ…

フィリップ・ドゥクフレ『コンタクト』2016

標記公演を見た(10月28日 彩の国さいたま芸術劇場大ホール)。ゲーテの『ファウスト』をモチーフにしたミュージカル、と言っても、いつものドゥクフレらしい眩惑的かつ奇天烈なイメージの氾濫あり、純粋なダンス・シーンありで、音楽的要素の強いドゥクフレ…

バレエシャンブルウエスト『コッペリア』2016

標記公演を見た(10月8日 オリンパスホール八王子)。『コッペリア』の魅力は、まずドリーブの音楽。ワルツを始めとする舞曲の素晴らしさ、リリカルなメロディ、ドラマティックなオーケストレーションなど、聴く喜びを常に与えるバレエ音楽である。二つ目は…

勅使川原三郎×山下洋輔『UP』2016

標記公演を見た(10月7日 東京芸術劇場プレイハウス)。構成・振付・美術・照明は勅使川原三郎、出演は勅使川原、佐東利穂子、山下洋輔(プログラム表記順)。勅使川原の演出は、相変わらず冴えている。繊細な薄闇や、大胆な逆光シルエットなど、照明の素晴…

先週見たダンサーたち2016

9月28日〜10月2日の公演で見たダンサーについて、メモしておきたい。 ●木原浩太@現代舞踊協会「時代を創る」(9月28日 さくらホール) ダンサー木原の魅力は、圧倒的な身体能力と的確な作品理解にある。今回の自作ソロでも、頭が付くかと思わせるぎり…

ミラノ・スカラ座バレエ団『ドン・キホーテ』2016

標記公演を見た(9月24日 東京文化会館)。ミラノ・スカラ座は1980年にヌレエフ版を導入した。パリ・オペラ座は1981年に導入しているので、こちらの方1年早い。同じヌレエフ版でも、スカラ座の方は、演技が自然。演者の体の力が抜けている(以前スカラ座の…

谷桃子バレエ団「貴女の人生に、“Bravo”」谷桃子追悼公演 2016

標記公演を見た(9月23日 めぐろパーシモン大ホール)。バレエ団創立者でプリマ・バレリーナだった谷桃子は、昨年4月26日に94歳の生涯を閉じた。前年の8月26日には、厚い信頼で結ばれた舞台パートナー、小林恭を失っている(享年83歳)。葬儀で、声を振り絞…

ラバン×フォーサイス@譲原晶子著『踊る身体のディスクール』2016

標記著作は、2007年に出版された舞踊研究書である(春秋社)。以前にも目を通し、その時はバレエ用語の変遷に興味が向かったが、今回は、先日の夏期舞踊大学講座で、ラバンの専門家とフォーサイス・ダンサーが同時に居合わせたことの意味を確認するために、…

現代舞踊協会「夏期舞踊大学講座」2016

標記講座を見学した(9月3、4日 国立女性教育会館)。今年はエミール・ジャック=ダルクローズとルドルフ・ラバンという興味深い取り合わせ。モダンダンスとコンテンポラリーダンスを考える上で、重要な身体思想家である。 開講式は、妻木律子研究部部長の進…

牧阿佐美バレヱ団新制作『飛鳥』2016

標記公演を見た(8月27日 新国立劇場オペラパレス)。本作は、1957年初演の『飛鳥物語』(台本・振付:橘秋子)を基に、牧阿佐美が改訂演出・振付を行なった、言わば親子合作の創作全幕である。山野博大氏によると初演当時、バレヱ団の母体である橘バレヱ学…

橘秋帆(牧阿佐美)@第42回「日本ジュニアバレエ公演」2016

標記公演を見た(8月13日 文京シビックホール)。主催は公益財団法人橘秋子記念財団。牧阿佐美は現在、新国立劇場バレエ研修所の他、橘バレヱ学校、日本ジュニアバレヱ、A.M.スチューデンツ、牧阿佐美バレエ塾と、5つの教育機関に携わる教育者だが、今回の…

日本バレエ協会「全国合同バレエの夕べ」2016

標記公演を見た(8月3日 新国立劇場オペラパレス)。文化庁と公益社団法人日本バレエ協会が主催する「全国合同バレエの夕べ」が、今年も開催された。文化庁・次代の文化を創造する新進芸術家育成事業の一環である。全国の若手ダンサーに、オーケストラ演奏で…

西岡樹里+中間アヤカ@「トヨタコレオグラフィーアワード」2016

標記コンクールを見た(8月6日 世田谷パブリックシアター)。最後の「トヨタ」ということもあったが、主な動機としては、西岡樹里、中間アヤカが出演したため。西岡は、1月の横浜ダンコレの『無・音・花』(振付:チョン・ヨンドゥ)で初めて見て、その優美…

西岡樹里×濱田陽平@『無・音・花』横浜ダンスコレクション2016

標記公演評をアップする(1月24日昼夜所見)。 「若手振付家の発掘と育成」、「コンテンポラリーダンスの普及」を目的とする横浜ダンスコレクションが21年目を迎えた。今回から、従来の振付家コンペティションと受賞者公演に加え、オープニングプログラム…

エッセイ『批評家の直観』2016

標記エッセイは、『ダンスワーク』74(2016夏号)の特集、「舞踊批評―透視するものとは」に寄稿したものである。 批評とは、知性と感性を総動員して作品を「経験」し、結果を分析すること。最終的には、その作家が現代の文脈の中でどのような位置を占めるの…

井上バレエ団『コッペリア』2016

標記公演を見た(7月24日 文京シビックホール)。関直人版『コッペリア』の特徴は、優れた音楽性に裏打ちされた踊りの数々。民族舞踊から、クラシック・ヴァリエーションまで、関独自の音取り、音楽解釈が散りばめられている。終幕のギャロップでは、踊る者…

松崎すみ子@バレエ団ピッコロ55周年記念発表会2016

標記発表会を見た(7月16日 練馬文化センター)。ほぼ5時間に及ぶ記念発表会。定番のパ・ド・ドゥやヴァリエーションに加えて、松崎すみ子の振付作品が随時入り、最後に松崎えりの振付を一部加えた『カルミナ・ブラーナ』が上演された。今回は昨年亡くなら…

白河直子@笠井叡『今晩は荒れ模様』2015

標記公演評をアップする(2015年3月26日 世田谷パブリックシアター所見) 舞踏、オイリュトミーを基盤とする笠井叡が、女性ダンサー6人に新作を振り付けた。出演順に黒田育世、寺田みさこ、森下真樹、上村なおか、白河直子、山田せつ子。笠井はプログラム…

カンパニーデラシネラ『ロミオとジュリエット』2016

標記公演を見た(7月15日 東京芸術劇場シアターイースト)。この作品は、2011年9月28日に、世田谷ものづくり学校でも見ている。元教室が舞台。2、3mの至近距離から、子供椅子に座って見た記憶がある。今回は機構の整った劇場。照明・音響・衣裳、演出の細…

東京シティ・バレエ団『白鳥の湖』2016

標記公演を見た(7月9、10日 ティアラこうとう大ホール)。2年ぶりの『白鳥の湖』。石井種生版の特徴は、ストイックなまでに抑制されたスタイルと、四幕の劇的パ・ド・ドゥにある。終幕は高速フラッシュと替え玉を利用して、オデットが人間の姿に戻る結末を…

クライム・リジョイス・カンパニー第1回公演2016

標記公演を見た(7月7日 メルパルクホール)。クライム・リジョイス・カンパニーとは、優れたダンサー・振付家である坂本登喜彦・高部尚子が、2015年に設立したカンパニーのこと(高部のたかは、本来ははしごだか)。一風変わった名前だが、公演プログラム掲…

小林紀子バレエ・シアター『ソリテイル』『二羽の鳩』2016

標記公演を見た(7月3日 新国立劇場中劇場)。二作とも、ステージングがジュリー・リンコンからアントニー・ダウスンに変わって初めての再演。『ソリテイル』(56年)は、一人ぼっちの少女が友達と遊ぶことを夢見て、想像の世界に浸るが、最後は再び一人ぼっ…