2019-01-01から1年間の記事一覧

2019年公演総括【追加あり】

2019年の洋舞公演を振り返り、印象に残った振付家・ダンサーを列挙する(含2018年12月)。 【バレエ振付家】 大ベテランの関直人、大竹みかが逝去。大竹は没前年まで新作を振り付けていた。同じく大ベテランの松崎すみ子は、『メアリー・ポピンズ』改題の『…

11月に見た振付家・公演2019

★皆藤千賀子 @「ダンスブリッジ 2019 インターナショナル劇場」(11月3日 セッションハウス) 『Age of curse』。1時間物を短縮したとのことで、やや断片的な印象も受けたが、その断片の強度、コンセプトの強さに驚かされた(皆藤はデュッセルドルフを拠点…

10月に見た公演2019

★NBAバレエ団『海賊』(10月20日 東京文化会館 大ホール) 久保綋一演出・振付、宝満直也振付。バイロン原作に寄り添い、新垣隆のオリジナル曲を大幅に採用した独自の改訂版である。コンラッドとメドーラの夫婦愛、ギュリナーレの悲恋、『ライモンダ』を思わ…

ミハイロフスキー劇場バレエ『パリの炎』『眠りの森の美女』2019

標記公演を見た(11月21日昼, 24日朝 東京文化会館大ホール)。4年ぶりの来日公演。毎年夏冬に公演していたレニングラード国立バレエ団時代との、あまりの違いに驚かされた。以前は、古典やボヤルチコフ作品を誠実に踊り、観客との間に近しい関係を築く一ロ…

日本バレエ協会「Ballet クレアシオン」2019

標記公演を見た(11月9日 メルパルクホール)。文化庁「次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」の一環である。協会の振付家育成・創作推進事業としては、先行の「バレエ・フェスティバル」が49回、文化庁共催となった「Ballet クレアシオン」が今回で9回…

レッドトーチ・シアター『三人姉妹』2019

標記公演を見た(10月18日 東京芸術劇場 プレイハウス)。ノヴォシビルスク州立(国立?)アカデミードラマ劇場の別名。演出は主任演出家のティモフェイ・クリャービン(84年生まれ)による。 所属俳優がロシア手話を習得し、2名の例外(アンフィーサ、フェ…

新国立劇場バレエ団『ロメオとジュリエット』2019

標記公演を見た(10月19, 20夜, 26夜, 27日 新国立劇場オペラパレス)。大原永子芸術監督最終シーズンの幕開けは、ドラマティック・バレエの定着を悲願としてきた監督にふさわしい、マクミラン版『ロメオとジュリエット』だった。 同版(65年)は、01年バレ…

牧阿佐美バレヱ団『三銃士』2019

標記公演を見た(10月5日 文京シビックホール 大ホール)。 振付のアンドレ・プロコフスキーは、1939年パリ生まれ。シャラ、バビレ、プティのカンパニーで踊った後、ロンドン・フェスティバル・バレエ、グラン・バレエ・ド・マルキ・ド・クエバス、NYCBで踊…

Kバレエカンパニー『マダム・バタフライ』新制作 2019 ①

標記公演を見た(9月29日 Bunkamura オーチャードホール)。プロローグ付き全2幕5場。洋装と和装の女性が重なるように描かれた象徴的紗幕が、場面転換に使われる。演出・振付・台本は芸術監督の熊川哲也、原作 ジョン・ルーサー・ロング、音楽 ジャコモ・…

Kバレエカンパニー『マダム・バタフライ』新制作 2019 ②

標記公演三日目を見た。主要キャストはゴロー、花魁を除いて、ファーストキャストと同じである。 主役の蝶々夫人には、持てる才能を順調に開花させた矢内千夏。生来の慎ましさが役柄によく合い、日本的はかなさ、透明感に、清潔なきらめきを加えている。その…

9月に見た公演など2019

9月はまだ終わっていない。Kバレエカンパニーの新制作も控えているが、記憶の新しいうちにメモしてみたい。 ★「塩田千春展 魂がふるえる」(9月3日 森美術館)✖「没後90年記念 岸田劉生展」(9月3日 東京ステーションギャラリー)✖「東京計画2019 vol.2 風…

8月に見た振付家2019

★伊藤範子 @ 「谷桃子バレエ団附属アカデミー 第59回生徒発表会」(8月7日 大田区民ホール・アプリコ大ホール) 高等科9人の女性に振り付けた『Gosh! win for the future』。ガーシュインの気怠さ、アメリカ的なテンポの良さが、振付に反映されている。音…

日本バレエ協会「全国合同バレエの夕べ」2019

標記公演を見た(8月10, 12日 新国立劇場 オペラパレス)。文化庁及び、公益社団法人日本バレエ協会が主催する「次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」の一環。各地で活躍する振付家・ダンサーが一堂に会し、互いの研鑽を確認し合う、言わば「バレエのふ…

吉田都引退公演「Last Dance」2019【追記】

標記公演を見た(8月8日 新国立劇場 オペラパレス)。「NHKバレエの饗宴」特別企画として、2日間にわたり開催。当日8日は、9歳でバレエを始めた吉田が、サドラーズウエルズ・ロイヤル・バレエ団で11年、英国ロイヤル・バレエ団で15年、フリーランスで9年…

7月に見た振付家・ダンサー 2019

★マルコ・ゲッケ @ ネザーランド・ダンス・シアター『Woke up Blind』(7月6日 神奈川県民ホール 大ホール) 来日プログラム4作の中で圧倒的に面白かった。レオン=ライトフット作品は当然だが、カンパニーのためのコンテンツという意識が強く、パイト作品…

井上バレエ団『シルヴィア』2019

標記公演を見た(7月21日 文京シビックホール・大ホール)。この5月10日にバレエ団芸術監督の関直人が急逝、その悲しみも癒えぬうちの新制作上演である。バレエ団は創立者の井上博文亡き後、その志を継いで、関による古典改訂と創作及び、ブルノンヴィル作…

東京シティ・バレエ団『ロミオとジュリエット』2019

標記公演を見た(7月14日 ティアラこうとう 大ホール)。本作はバレエ団と江東区との芸術提携15周年を記念して、2009年に初演された。12年、14年の再演を経て、今回は25周年記念、5年ぶりの上演となる。構成・演出・振付は中島伸欣、振付 石井清子、編曲 福…

6月に見たダンサー・振付家 2019

★佐辺良和 @ 青山実験工房「能と琉球舞踊」(6月24日 銕仙会能楽研修所) 標記公演は、能と琉球舞踊を並列させ、組踊における能の影響を見ようというもの。組踊の始祖 玉城朝薫は、大和芸能に造詣が深く、1706年薩摩で仕舞『軒端の梅(東北)』を舞った(プ…

新国立劇場バレエ団『アラジン』2019

標記公演を見た(6月15, 16, 22昼夜, 23日 新国立劇場オペラパレス)。ビントレー版『アラジン』は2008年、牧阿佐美芸術監督時代に同団が初演したオリジナル作品である。2010/11シーズンから、ビントレー自身がBRBとの兼任芸術監督として就任。2011年の再演…

牧阿佐美バレヱ団『リーズの結婚』2019

標記公演を見た(6月8, 9日 文京シビックホール 大ホール)。アシュトン版『ラ・フィーユ・マル・ガルデ』(=『リーズの結婚』)は、1960年英国ロイヤル・バレエ初演。牧阿佐美バレヱ団では1991年に導入し、再演を重ねてきた。今年4月、新国立劇場バレエ団…

5月に見たダンサー・公演 2019

★森下洋子 @ 清水哲太郎振付『眠れる森の美女』(5月3日 オーチャードホール)。 清水版『眠れる森の美女』は、清水独自のモダンな振付に混じって、ヌレエフの構成・振付が遺跡のように残り、バレエ団の歴史の一端を垣間見せる。森下(48年生まれ)のオーロ…

蘆原英了『舞踊と身体』✖ 井口淳子『亡命者たちの上海楽壇』2019

前者は音楽・舞踊評論家の蘆原英了が、1920年代から70年代にかけて書いた舞踊エッセイを集めたもの(1986年 新宿書房)。クルト・ヨースの『緑のテーブル』予習のため、手に取った。ヨースの箇所は朧気、覚えているのはパブロワの遺骨をめぐる旅と、ゴンチャ…

新国立劇場バレエ団 『シンデレラ』 2019

標記公演を見た(4月27, 28, 29日, 5月4, 5日 新国立劇場オペラパレス)。99年団初演、1年半ぶり12回目のアシュトン版『シンデレラ』である。何度見ても尽きない面白さ、発見がある。クリスタル・カットを施された切れの良い主役・ソリスト振付、星の精群舞…

佐東利穂子『泉』 2019

標記公演を見た(4月13日 KARAS APPARATUS)。佐東初めての振付作品。計8回のアップデイトダンスのうち、2回目の公演である。カミテ奥には、滝のような、泉が盛り上がったようなインスタレーション。薄暗い照明のなか、佐東がゆっくりと動き始める。 現代…

大竹みか先生を追悼する 2019

コデマリバレエスタジオ主宰の大竹みか先生が、3月27日に亡くなられた(享年85歳)。スタジオでは毎年4月に「コデマリコンサート」を開催する。今年は4月7日、貝谷バレエ団80周年記念を兼ねての特別公演である。その直前の訃報に、胸が詰まる思いだった。闘…

新国立劇場バレエ団「DANCE to the Future 2019」①

標記公演を見た(3月29, 30夜, 31日 新国立劇場 小劇場)。前芸術監督 D・ビントレーが2012年に始めた振付家育成企画。団員の振付を団員が踊ることで、両者にクリエイティブな相互関係が生まれる。前監督時代は、振付家の卵たちが思うがままに作品を発表する…

新国立劇場バレエ団「DANCE to the Future 2019」②

2部はベテラン2人の新旧作。貝川鐡夫の新作『Danae』(音楽:J・S・バッハ)は、ギリシャ神話からインスピレーションを得たパ・ド・ドゥ。ゼウスが見守るダナエのソロ、ゼウスの欲情するソロ、ゼウスとダナエのエロティックなアダージョ、最後はゼウスが金…

3月に見た振付家・ダンサー2019

★熊川哲也 @ Kバレエカンパニー『カルメン』(3月8日 オーチャードホール) 2014年初演、3度目の上演。初演時のやや生硬な印象とは異なる、豊かでふくよかな演出だった。登場人物にふさわしい振付が、細やかに上書きされ、それぞれの人物が自立して見える。…

新国立劇場バレエ団『ラ・バヤデール』2019

標記公演を見た(3月2, 3, 9昼夜, 10日 新国立劇場オペラパレス)。牧阿佐美版(2000年)、6回目の上演である。『ラ・バヤデール』の魅力は、人間の業を描いたドラマティックな展開、プティパのシンプルで豪華な群舞振付、ワルツと行進曲に彩られたミンクス…

NBAバレエ団『白鳥の湖』新制作2019

標記公演を見た(3月2日 東京文化会館 大ホール)。芸術監督の久保綋一による新版。2006年に上演されたガリーナ・サムソワ版を基に、久保が演出、宝満直也が振付を担当した。音楽監修は冨田実里(指揮も)、3幕マズルカ、ポルカは、新垣隆がチャイコフスキ…