2、3月の公演感想メモ(旧 Twitter)2024

* KAAT 長塚圭史三浦半島の人魚姫』『箱根山美女と野獣。神奈川県を巡るファンタジー唐十郎的な)2作。長塚の想像力と創造力が躍動する。東京都から越境して見たが、神奈川の地名が出るたびに、なぜか嬉しくなった(もちろん地元民は大喜び)。ご当地物に留まらず、物語の原初と現在が混淆、戯曲家としての成熟を窺わせる。

役者は粒ぞろい。端正で飄逸な菅原永二、ヴァイオリンと歌も巧い片岡正二郎、味わい深い個性派の長塚、そして初演劇のダンサー二人、発話・動き共に切れのある愛くるしい四戸由香、振付も担当する妖艶・少し不気味な柿崎麻莉子、ピアノ・パーカッション・歌は優雅なトウヤマタケオ(音楽:阿部海太郎)。客席の大笑いと呼応し、6人のパワーが炸裂する。

四戸の太宰弁に合わせたクネクネ人魚舞い、人魚柿崎と四戸の出会いのデュオなど、柿崎振付の妖しさが生きた。男装コスプレ野獣では、柿崎の厚底ブーツ決め決め踊りも。演劇とダンス、俳優とダンサーの幸福な結婚。(2/8 KAAT 神奈川芸術劇場 中スタジオ)2/9 初出

 

現代舞踊協会「一日舞踊大学講座」。伊藤郁女の喋りと踊りに脳が動いた。島地保武の言葉「若いダンサー達のエネルギーは、なんだか漢方みたいです」と同様、体がポカポカして、ぐっすり眠れた。伊藤は戦略的作品ではなく、クレージーな作品を作るべき。彩の国で山崎広太を使った時のように。(3/2 スタジオF)3/2 初出

 

*埼玉県舞踊協会「バレエ・モダンダンス フェスティバル」、12人の振付家がスタジオの生徒に振り付ける。トリを務めた窪内絹子が、『おいしいおいしいあんころ餅のうた』で、師匠譲りの創作エネルギーを爆発させた。考え抜かれた構成、細やかなムーヴメント創出の素晴らしさ。森荘太の衣裳も可愛い。茶色いベレー帽とジャンパースカートの「あづき」達が生き生きと動き、白い衣裳の「さとう」達と混ざり合って「あんこ」になる。和菓子職人(3→2人)も活躍。最後は白長の餅達があんこを包んで大福に。窪内のあふれんばかりの愛情が子ども達に注がれ、胸が熱くなった。

他のベテラン勢も個性発揮。すゞきさよこの音楽的フォーメーション、井上美代子のエレガントなスタイル、中村友美・上田仁美の涼やかな東洋的ポーズ、細川初枝・麻実子の和物など。カンフーモダンもあり、多彩なプログラムだった。(3/3 埼玉会館大ホール)3/5 初出

 

NHKバレエの饗宴」最後の振り返り映像は、新国が米沢のグラン・フェッテ、PDD3組は組んだ所だったが、東京シティは、福田建太と岡博美がゴロゴロ転がる場面。余程強烈な絵柄だったのだろう。福田はニジンスキーに匹敵する無意識の大きさがある。本来は主役を踊るべきダンサー。(3/24 NHK Eテレ)3/25初出

 

昨年の感想メモだが、

*森立子編著・訳 ノヴェール『舞踊とバレエについての手紙』解説読了(本体は途中)。とても朧げだった 18世紀バレエ界が鮮明になった。多くの参考文献を咀嚼し、それを分かりやすく生き生きと解説されている。ノヴェールが開いたウィーンのバレエ学校には、ブルノンヴィル父が在籍したそう。ノヴェールの生い立ち、ダンサー、メートル・ド・バレエ時代の逸話が面白い。

初舞台はイエズス会の学校公演(学年末の授与式)で 14歳。振付は24歳位から。初期代表作に『中国の祭り』がある。シェイクスピア役者でドルリー・レイン劇場支配人のデイヴィッド・ギャリックとの親交が『手紙』の構想・執筆へと繋がっていく。『中国の祭り』は同劇場でも上演された。どんな作品だったのか。

森氏は『手紙』を理論書のみならず実践書でもあると語る。「ダンサーの体の構造について」(第 1 1の手紙)を読むのが楽しみ。解説が面白かったので、先にツイートしてしまった。2023年5/1初出