福田美蘭展

標記美術展を見た(9月7日 東京都美術館ギャラリーA・B・C)。
当日18時から東京文化会館小ホールでパーカッションとダンスのコラボ公演があった、そのついで(公演自体は何のため、誰のための公演かよく分からなかった、都民のためでもなく)。
福田はデザイナー福田繁雄の娘。コラージュやパスティーシュの画家と思っていたら、違っていた。考えたことを絵にするのではなく、絵を描くことで考えるタイプ。絵に添えた福田自身のコメントを読むことで、絵は完結するのだが・・・
まず絵を描く喜び、絵を見る喜びが根底にある。絵に対する愛情と、絵を聖化せず、すべてを零度に戻して考える批評精神が、ユーモアによって結び付けられている。祖父の童画家林義雄からすると三代目にあたるが、その蓄積ゆえだろうか。
職人的な技量の高さは、作家の金井美恵子を思い出させる。安井曾太郎になり切って(つまり安井のスタイルで)、『孫』(大原美術館所蔵)を描いている安井を描いた『安井曾太郎と孫』(大原美術館所蔵)は、金井が目白サーガでやっていることだ。
時事を扱っても浮つかないのは、イデオロギーを信じていないから。というか感覚を通過させずに思考することがないから。珍しく躊躇なく図録を買い、絵葉書は『涅槃図』『ロゴマークを描く』『レンブラント―パレットを持つ自画像』を買った。