WWFes2013 山崎広太×伊佐千明×外山明@生西康典

半年ぶりに山崎の踊りを見た(10月17日 森下スタジオB)。山崎、西村未奈、印牧雅子が運営する Body Arts Laboratory が、年に一回主催する Whenever Wherever Festival の一プログラム。WWFes は創作プロセスを重視し、そのことでダンサーのネットワーク(コミュニティ)を作ることを目指している。今年は「即興の再生」というテーマだった(10月27日まで)。
「エクスペリメンタル・パフォーマンスday1」と題されたプログラムの後半作品で、演出は生西康典。黄緑地に菱形の模様が入ったシャツに薄茶色のパンツをはいた山崎と、黄緑とオレンジ色が入り混じったワンピースの伊佐が並んで立っている。外山明の祭囃子のような、お神楽のようなパーカッションで、動き始める二人。伊佐はつぶらな瞳のかわいいダンサー。広太の動きを推し量るように、おずおずと動き、広太は恥ずかしそうに、伊佐を守るように遠慮がちに動く。伊佐の若さにやられている中年男の図。新聞を斜めに巻いてぎりぎりねじり、はしっこを持ち合って動くシークエンス(生西演出)の後、ちぎった新聞を伊佐が、細長く出っ張った柱によじ登り手すりにねじ込む。再度、今度は上までよじ登って新聞を突っ込む。最初の手すりはようやく手が届くところにあり、そこまではつるつるの壁を登らなけらばならない。伊佐は木登りの要領で軽々とよじ登った。それまでのかわいいイメージが一変し、こいつはこんなやつだったのかと目が覚めた。広太も覚めたのか、そこからアドレナリンが発生して、いつものタコのようなクネクネ動きが始まった、その前に伊佐を抱き下ろしたが。そこからは対等のダンサー。動きでの対話がクネクネ、ぐるぐると続く。伊佐はもはやかわいらしさを通り越して、化け物のような集中を見せる。広太も伊藤郁女の時ほどブチ切れなかったが、即興の旅に身をまかせていた。観客にとって即興の楽しさは、ダンサーと一緒に旅をしていくところ。楽しかった。
生西のキャスティングだけで、パフォーマンスの成功は保障された。広太の父性と狂気、伊佐の生きのよさ、外山の繊細なパーカッション。祭り太鼓に加わるカウベルのような鐘の音は後で訊いたところ、ギニアの鐘とのこと。アメリカ経由のアフリカ音楽だと分からないが、(日本の)祭りの音楽に共通するところがあるとも。あんなにしっくりくるパーカッションは初めてだった。二人の踊りが新手の獅子舞に見えた。