新国立劇場バレエ団「ダイナミック・ダンス!」公開舞台リハーサル

明後日から上演の「ダイナミック・ダンス!」公開舞台リハーサルを見た(1月21日 新国立劇場中劇場)。
2011.3.11の影響で直前に上演中止となったプログラムである。参加者は東日本大震災の復興支援に、500円以上の寄附を求められた。チャリティー・リハーサルということ。リハーサルに先立って芸術監督ビントレーのお話。「先週、小野絢子と福島のバレエ学校に行ってきた。どれだけ震災の影響があり、どれだけ復興しているかを見るため。NHKのドキュメンタリーの一環。今日もカメラを担いだ男の人が付いて回るが、これは作品の一部ではないので(笑)。」
先週金曜日にメディア向けのシーズンラインアップ説明会と記者懇談会があった。その懇談会の席で、ピントレー監督がアウトリーチについて語ったことを思い出した。「BRBでは年間500もの企画を行なっている。学校、障碍者、また受刑者など様々なアウトリーチをやる。イスラムの学校の時は、女性ダンサーだけ行って、窓を目隠ししてやった。後で、生徒が今までで一番楽しかったと言うのを聞いて、嬉しかった。新国でもやろうとしたけど、とっかかりも作れなかった、残念。」
ビントレーの社会貢献、社会の福祉に関わる姿勢は、震災直後のBRB来日の際、すぐにチャリティー公演を行なったことでも明らかだった。本当は新国立が先陣を切らなければならないはずだが(国税で成り立っているのだから)。ビントレーは『パゴダの王子』において、家族が団結することで、国が健康を取り戻す過程を描き、復興への祈りをこめた。日本の美術(国芳)と身体(能)を取り入れることは、震災前から決まっていたが、その日本へのオマージュがどれほど我々の慰めになったことか。さらに適材適所の配役をすることで、バレエ団を有機的な組織に変え、バレエ団と観客に希望をもたらした。あるべき芸術監督の姿。

リハーサルはビントレー作品『テイク・ファイヴ』。場当たりをファーストキャストが行ない、ファーストキャストの本番、ダメ出し、セカンドキャストの本番、と続いた(2時間超)。同じ振付を2キャストが続けて踊ることで、ダンサーの個性がよく分かる。それを監督が熟知していて、肯定していることも。ダンサーは伸び伸びと踊っている。
いつも、誰がこうとか、誰がああとか好きなことを言っているが、リハーサルとして見ると、ダンサーたちがいかに細かい動きを記憶し、遂行しているかを思い知らされる。音と渾然一体となる動きが、どれほどの微細な身体コントロールによって行われていることか。バレエダンサーは特殊技能者であり、職業として確立されるべき。モンゴルの国立ホーミー歌手は、過酷な仕事なので、年金支給までの就業期間が短い。それを思い出す。彼我の差はありすぎだけど。