金森穣『ZAZA〜祈りと欲望の間に』

Noism1の神奈川公演を見た(5月26日 KAAT)。
一時、首都圏で公演を打たなかったが、その間に、ダンサーがバレエベースで統一されていた。演技派宮河愛一郎を除いて、みんな体が切れる。ラインも美しい。その分、金森の振付に抵抗する体(島地保武、青木尚哉、平原慎太郎のような)がいなくなった気がする。金森コンセプトの今回、また昨年の『Nameless Voice〜水の庭、砂の家』を見ると、空間が閉じられている。金森の思うがまま。昨年末の『中国の不思議な役人』は音楽、台本があるので、金森の物語との格闘がある分、外に開かれていたが。
定期的に新作を作るレジデンシャル・カンパニーの場合、振付家一人の想像力では賄いきれないのが普通だろう。ドラマトゥルクか、台本から金森をアシストするスタッフが必要ではないのか。『Nameless Voice』はコンセプトを盛り込みすぎて、メッセージが伝わりにくく、『ZAZA』は、ダンサーの技量を生かし切れるコンセプトとは言えなかった。インスピレーションの度合いが浅い。
プロのコンテンポラリー・ダンス・カンパニーを維持し、ダンサーを育成し、ダンサー雇用の受け皿を作る金森の才能は、もちろん凄いと思う。また物語に即した演出振付の才能も。美術、音楽以外のコラボレーションが期待できれば、新たな展開があると思うのだが。