オールニッポンバレエガラ2012

日本人バレエダンサー達による復興支援チャリティ、「オールニッポンバレエガラ2012」を見た(8月15日 メルパルクホール)。昨年、東日本大震災から5ヶ月後の8月15日に開催されたガラの2回目で、今年が最後とのことである。当然ながら、昨年の公演を牽引した、死者への鎮魂と、被災者への励ましは少し後退し、バレエ団の垣根を越えた日本人ダンサーの表現の場、という印象が強かった(福島の若手男女二人の特別参加はあったが)。構成は昨年よりもコンパクトでバランスがよく、公演のあり方としては進化している。
公演の意義は、遠藤康行の2作品が上演されたことだろう。『Mayday, Mayday, Mayday, This is...2012ver.』は震災の衝撃をそのまま映し出した作品。遠藤が死者達を召還し、踊らせ、再び冥界へと連れ帰る。ミュータントのような平山素子が、切れの良い自在な動きで、空間をあおり続ける。もう一つの作品『3in Passacaglia』では、小池ミモザのエロティックな体(面白い生物)を、マジな柳本雅寛がサポートし、遠藤がまとめて、強力な三角肉体関係を作りだす。遠藤の振付は両者ともに、動きが作り込まれ、それが自分の根っ子と深く関わっている。キリアン系振付家によくある、形の美しさを追求する瞬間は微塵もなかった。実質的な振付である。
ダンサーでは米沢唯が圧倒的なパフォーマンスを見せた。新国立の全幕時よりも自由で手練れの黒鳥である。王子の厚地康雄を自在にあやつり、厚地は嬉々として仰せに従っていた。米沢の回転は音がしない。アン・ドゥオールとアン・ドゥダン・ピルエットの切り換えが見えない。ガラでの見せ方を心得、しかも品を失わない踊り。すばらしかった。
また福島の佐藤理央の責任感の強さ(もちろん技術はすごい)、加藤三季央の伸びやかな踊りは、観客にも、恐らくダンサー達にもショックを与えた。加藤はサポート術を身に付けなければならないが、この二人がどんなダンサー人生を送るのか、ダンサー輸出国日本の底力と、国内環境の後進性について、深く考えさせられた。