コデマリスタジオ第49回「コデマリコンサート」

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コデマリスタジオの「コデマリコンサート」が49回目を迎えた。三部構成の第一部は、スタジオ生が日頃の成果を披露する発表会、第二部はタンゴ、バレエ、モダンの創作小品集、第三部はスタジオ全員で『ロミオとジュリエット』のリハーサルを舞台化した『追想』。主宰大竹みかの美意識に貫かれた一夕だった。


第一部では古典のパ・ド・ドゥに、大竹振付の児童向け『絵本はゆ*れ*る』と、成年女性向け『あこがれ』が上演された。前者はドボルザーク曲で可愛らしく、後者はショスタコーヴィチピアノ曲で美しく踊られる。特に『あこがれ』は、大竹の香り高い気品と、深い音楽性が、清冽なフォーメイションで視覚化された名品。スタジオ生の中には回転も儘ならぬ人もいたが、それでも作品の本質は伝わってきた。他に『海賊』パ・ド・ドゥにゲスト出演した鈴木裕の端正な踊りとダイナミックなリフト、新井光紀のサポートで『白鳥の湖』グラン・アダージョを踊った河邊優の行き届いた踊りが印象深い。


第二部の前半は「VIVA TANGO!!!」の題名の下、3つの小品が上演された。安藤雅孝振付『I am Woman』は大竹=安藤組を中心に5組の男女が踊るタンゴ作品。大竹の磨き抜かれた洒脱なラインを、安藤の深い情念が包み込むデュオが素晴らしい。続く大竹振付の『Tango del Gatto』は、若い女猫たちがチュチュで踊る上品なショーダンス風の作品。猫の手の振りが可愛い。最後の『Leonora’s Song…restart』はアルゼンチンタンゴの名手竹原弘将の振付で、竹澤薫と竹原が踊る。竹澤はポアントなので垂直のラインが入る。伸びやかで優雅なタンゴだった。


第二部後半は長谷川秀介振付の『星月夜』と『memento mori』。前者はメンデルスゾーンの『真夏の夜の夢』で杉本芸録が踊るクラシカルなソロ。後者はドビュッシーの『月の光』に乗せて、長谷川が師の本間祥公と踊るモダン作品。「死を忘れるな」という題名がモノクロの舞台に反映される。シンメトリーの動きで近づき、ボールルームダンスのポジションで組む男女。モダンのベテラン本間はクラシックのラインも持ち、なおかつ体の隅々にまでニュアンスを込めることができる。二人が見つめ合うだけでドラマが立ち上がった。


第三部の『追想』は大竹の原案、安藤の構成・振付。プロコフィエフ曲を使用し、一部分江藤勝己のピアノ演奏が流れる。ジュリエットを踊ったばかりの大竹が、カーテンコールで喝采を受ける場面から舞台は始まる。そのレヴェランスの素晴らしさ。大竹の舞台人としての真率さが伝わってくる。年月が過ぎ、大竹はバレエ団の団長として若手ダンサー(壁谷まりえ)を育てる日々。そこに恋人だった男性(吉田隆俊)とその教え子(新井)がリハーサルにやってくる。かつての自分たちを若い二人に投影するベテラン二人。安藤バレエマスターによるバーレッスンに続き、『ロミオとジュリエット』の名場面がコンパクトに綴られる。


ジュリエットの壁谷、ロミオの新井は共にはまり役。大人全員で踊る「騎士の踊り」には迫力があった。ピアノ版がいつの間にかオケ版に切り替わり、リハーサルと本番の間が夢のように移ろうなど、演出には面白い着想が散見された。幼児から大人までスタジオ全員が出演する前提のため、発表会風の場面もあったが、安藤の演出が行き渡った作品だった。(4月6日 メルパルクホール) *『音楽舞踊新聞』N0.2925(H26.5.1号)初出