Kバレエカンパニー『ロミオとジュリエット』2014

標記公演評をアップする。

Kバレエカンパニーが創立15周年記念の一環として、熊川版『ロミオとジュリエット』全二幕(09年)を上演した。音楽はプロコフィエフである。熊川版の特徴は、やはり男性ダンサーの踊りが多いこと。ロミオ、マキューシオはもちろん、ベンヴォーリオ、パリス、ティボルトも踊って、自らの心情や感情を吐露する。振付は高難度。二幕のマンドリンダンスもソリスト級が技を競う。


プロット面では、ジュリエットの従姉ロザラインが準主役に格上げされている。朝早くから(夜遅くまで?)友達を引き連れて街中を歩いたり、町の娘と取っ組み合いの喧嘩をしたり、敵方モンタギュー家の若者(ロミオ、ベンヴォーリオ)と戯れたり、親戚のティボルトと同士のような愛情で結ばれたり、全てが姐御肌。振付も男勝りのステップが与えられる。その結果、ジュリエットはより淑やかに、キャピュレット夫人は貞淑な妻で愛情深い母として描かれることになった。ここに、振付家熊川哲也のこだわりがあったのかも知れない。


上演3回目を迎えて、ドラマの推移は自然になり、主役から脇役に至るまで演技が練り上げられている。英国ロイヤル・バレエで主役を歴任したスチュアート・キャシディ副芸術監督のサポートは大きい。主役は4組、その内の神戸里奈、池本祥真組を見た。


神戸はドラマティックと言うよりもリリカル。ラインは慎ましく、終始抑制された動きで淑やかさを醸し出す。もう少し感情を出してもよいと思われるが、薬を飲む前の演技には緊迫感があり、演出に沿って計算された役作りなのだろう。対する池本は若々しさを前面に出した自然な役作り。よく開いた美しいアラベスクが、ロミオの感情を雄弁に物語る。横軸回転してアラベスクで立つ難技遂行の鮮やかさ。佇まいにも芯が通っている。ソロルと共にはまり役と言える。


マキューシオは酒匂麗、ティボルトはニコライ・ヴィュウジャーニン、ベンヴォーリオは益子倭、ロザラインは白石あゆ美、パリスは川村海生命が、全力で勤め上げた。キャピュレット卿のキャシディは華やかでノーブル、夫人の酒井麻子はゴージャスで感情豊か。キャピュレット家の若者杉野慧、ヴェローナの娘井上とも美、ジュリエットの友人佐々部佳代の演技と踊りが一際目を惹いた。アンサンブルは技術的にレベルが高く、音楽的にも統一されている。


福田一雄指揮、シアターオーケストラトーキョーが、熱くドラマティックな音楽で舞台を支えている。(6月28日 オーチャードホール) *『音楽舞踊新聞』No.2932(H26.8.1/11号)初出