東京シティ・バレエ団『ロミオとジュリエット』2019

標記公演を見た(7月14日 ティアラこうとう 大ホール)。本作はバレエ団と江東区との芸術提携15周年を記念して、2009年に初演された。12年、14年の再演を経て、今回は25周年記念、5年ぶりの上演となる。構成・演出・振付は中島伸欣、振付 石井清子、編曲 福田一雄、美術 江頭良年、照明 足立恒、衣裳 小栗菜代子による。

全2幕の構成。バルコニーシーンが間奏曲を挟んで、そのまま街の広場に続き、ロミオとジュリエットの奔流のような恋が、原作に近い時間感覚で描かれる。また女性4人による「運命の人々」が、悲劇に至る道筋、行き違いをヴィジュアルに演出する。鈍色の衝立移動による場面転換、終幕 二人を慰撫するように広がる銀色の布も、中島版の大きな特徴である。

振付はキャラクター・ダンスが石井、ストーリーテリングが中島(騎士の踊りはどちらだろうか)。石井の、ロマの踊り子、旅芸人、街の人々に付けられた音楽的で色彩豊かな振付、中島の宙を飛ぶようなバルコニーシーン、床をころがる悲しみに満ちた夜明けのパ・ド・ドゥ、さらに自らを傷つけるロミオ、およびジュリエットのソロ。それぞれの個性が花開いている。バルコニーでジュリエットにキスをされ、でんぐり返るロミオ、両腕リフトしたジュリエットを下ろしながらのキス(力技)も、中島版でしか見られない。

主役は初日がキム・セジョンと清水愛恵、二日目が吉留諒と庄田絢香。初役同士の二日目を見た。吉留ははまり役。ロミオの真っ直ぐに育った純粋さ、素直さが体現されている。踊りの端正なスタイル、役に入る没入の深さ、パートナリングの親密さ、さらに初々しさが、稀にみる涼やかなロミオを造形した。マキューシオの仇を討つ若々しい憤り、その後の悔恨の瑞々しさは、吉留のドラマティックな資質を示している。

庄田のジュリエットはしっかり者。活発で腹が決まっている。ロミオに先にキスをするのも納得できる。確かな技術は、バルコニーでのロミオとの踊り合い、弾むような跳躍から明らかである。まだ表現主義的なソロの解釈が追い付いていないが、全てが自分の踊りになれば、さらに激しいジュリエットになるだろう。

ティボルトの濱本泰然は、ダークなノーブルスタイル。吉留ロミオとの闘いは阿吽の呼吸で、見応えがあった。マキューシオの内村和真は踊りの切れも素晴らしく、愛される人柄。ロミオを庇う死の場面には説得力がある。ベンヴォーリオの福田健太は少しやんちゃ系。将来のロミオに見えた。

物語の筋道や感情の流れに沿った細やかな演出が、バレエ団の演技力を発揮させる。ヴェローナ大公 李悦、キャピュレット夫妻 春野雅彦・平田沙織、乳母 草間華奈、パリス 石黒善大、ロレンス修道士 堤淳、その助手 佐世義寛が、団の伝統を受け継いでいる。また、目の覚めるような踊りを見せた玉浦誠、岡田晃明率いる旅芸人、濃厚なロマの踊り子たちも、舞台を鮮やかに彩った。

指揮は井田勝大、演奏は同じ江東区芸術提携団体の東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団。福田編曲版をダイナミックに歌い上げた。ただしダンサーの音楽を待つ瞬間が前半部に散見される。演出との摺り合わせを期待したい。