森嘉子『PADRES』(舞踊作家協会連続公演No.176)

標記公演を見た(9月2日 ティアラこうとう小ホール)。森嘉子の東京新聞制定舞踊芸術賞受賞記念公演。芸術監督に森、企画は雑賀淑子と加藤みや子。森と雑賀は、高田せい子の高弟である彭城秀子の弟子。それぞれの道を歩んだのち、偶然公演で出会い、旧交を温めた仲である。加藤は森の弟子で、森が渡米したのちは、藤井公の預かりとなった。森と雑賀はその加藤のスタジオで、舞踊評論家の山野博大氏を司会役に対談も行なっており、本企画は加藤の師匠孝行の色合いが強い(山野博大編著『踊る人にきく』参照)。
森の舞台は気になっていたが、残念ながら今回が初めての舞台。病気明けで、現在80歳という前情報によるイメージは、完全に覆された。上腕の張りのある筋肉、鍛え抜かれた背中、鋭いサパテアード。優雅で力強い、洒脱なダンサーだった。弟子の加藤とデュオを見せる場面では、両者の対照が明らかになる(加藤は森の所ではポアントで踊り、藤井の所ではモダンダンスを踊った)。森の研ぎ澄まされたフォルムの厳しさと、加藤の全能感あふれる少女性、暖かいエネルギーは、役どころである厳しい母親と奔放な娘そのもの(ロルカ原作、加藤作『白い壁の家』より)。アフロ・ジャズダンスとモダンダンスという師弟が歩んだ道の違いにも思いが至った。
また加藤の弟子である木原浩太がソロを踊った。フォルムと内的エネルギーの両方を兼ね備えたダンサー。今回は脚のバランスの美しさに目を奪われた。