Dance New Air 2014 片桐はいり@『赤い靴』

小野寺修二の演出で、片桐はいり、Sophie Brech、藤田桃子、小野寺が出演した(9月12日 青山円形劇場)。『赤い靴』と言えば、ダンスとの関連から、当然アンデルセンの『赤い靴』を考えなければいけなかったのに、なぜか「赤い靴〜履いてた〜女の子」だとばかり思って、舞台に臨んだ。始まると、かつて読んだアンデルセンの断片が次から次へと出てくる。小野寺の文芸物の一つだったのだ。
原作はキリスト教の教訓色が強いが、そうした色合いはなく、赤い靴と靴屋にまつわるエピソードが多かった。片桐の靴検品の鋭い眼差しは、モギリの高場で培ったのだろうと思ったり。そもそも片桐を見るために、青山円形に向かったのだ。前日、日経の「SECRETS」というコラムで、片桐の一問一答に腹を抱えて笑ったばかり。最後の質問「生まれ変わったら何になりたい」に対して、「笠智衆」と答えていたので、片桐の動き、演技に笠の残像が付き纏った。体の全てに嘘がない。動きはもちろん、足指、ふくらはぎ、手などの細部に至るまで、借り物でない。動きを見るだけで陶然とする役者は現代物では少ない。変な連想だが、飯田蝶子を思い出した。何をやっても様になる、ディシプリンのある役者。片桐の場合はそこに実存の深みが加わる。コメディに悲劇を差し込むことも、不条理劇を軽くも重くもなく、そのまま演じることもできる。自分にとっては、山崎広太と同じ位置にある身体芸術家。