東京小牧バレエ団「スター・ガラ2015」

標記公演評をアップする。

東京小牧バレエ団がボストン・バレエの精鋭を招いて、「スター・ガラ2015」を開催した。バレエ団の常連ゲストで、ボストン・バレエ所属のアルタンフヤグ・ドゥガラーと、菊池宗団長のプロデュースによる。


第一部は『ジゼル』第二幕。佐々保樹の演出・振付は、プティパに遡る物語性を有していた。形骸化した振付に、本来の言葉を蘇らせている。ミルタが十字架を怖れる場面、ウィリの対角フォーメイションが鮮烈だったが、特にアルブレヒトの終幕は、深い嘆きを感じさせて、他版にはない説得力があった。佐々は優れた黒鳥のパ・ダクションも振り付けている。古典バレエの物語性に光を当てる貴重な上演だった。


ジゼルにはボストン・バレエのプリンシパル、倉永美沙。艶のある体に柔らかな腕使いで、コケティッシュな魅力を発散させた。アントルシャの力強さ、跳躍の鋭さも素晴らしい。アルブレヒトはドゥガラー。少しナルシスティックに見えたが、ノーブルな官能性を漂わせた。


ミルタの市河里恵も、長年ボストンで活躍。死霊にしてはやや情熱的に過ぎると思われたが、ダイナミックな個性を十全に発揮した。ドゥ・ウィリの長者完奈と金子綾が、消え入るようなラインでバレエ団の長所を体現。ウィリたちは団員とオーディション選抜者の混合のため、スタイルの統一には至らなかったが、密やかな佇まいは共有していた。


第二部はコンサート形式。『海賊』パ・ド・トロワ、『ラ・バヤデール』パ・ド・ドゥ、『ドン・キホーテ』グラン・パ・ド・ドゥと、ヴァル・カニパロリ、ユーリ・ヤノウスキー、ジェフリー・シリオによる創作5曲。古典では、『ドン・キホーテ』を溌剌と踊った倉永と、同じく超絶技巧を控え目に見せたシリオが、圧倒的な存在感を示した。創作ではシリオの2作。自身が踊った武術家のようなソロ、ドゥガラーの官能性を引き立てる『of Trial』が印象深い。


人種、体型、舞踊スタイルの異なる10人が、情熱を込めて踊り継いだ一時間半。人種の坩堝ならではの実験性、新しいスタイルの導入などを目前にできたアット・ホームなコンサートだった。(6月26日 新宿文化センター) *『音楽舞踊新聞』No.2952(H27.7.15号)初出