谷桃子バレエ団『Fascination Concerto Triple』2015

標記公演を見た(8月16日 DDD AOYAMA CROSS THEATER)。舞台と客席が近い空間で、迫力あるバレエパフォーマンスを見せる T-CONNECTION シリーズの3回目。
演出・振付は坂本登喜彦、作曲・音楽監修・演奏は打楽器奏者のYAS-KAZ、映像は立石勇人。踊り、音楽、映像が高いレベルで噛み合った作品。シンデレラの靴をモチーフに、3人の男性ダンサーの魅力を隈なく見せることに力点がある。坂本の振付は、ダンサーの本質をえぐり出すダンサー批評だった。
三木雄馬は、『夏の夜の夢』のパックやギリシア神話のエロスのような無垢な少年。振付は高度な技術を織り込んでいるが、持ち味であるロシア風のダイナミズムはなく、繊細で両性具有のようなニュアンスを帯びる。清潔な肌合いは、三木の踊りで初めて見る要素だった。
今井智也は、金髪でダイナミックな踊り。牧神のように無意識の部分を拡大したエネルギッシュな青年だった。行儀のよい舞台を多く見てきたが、自分を突き抜ける破天荒なタイプだったのか。
齊藤拓は、ダークでエロティックな男。胸から脚にかけての美しいラインが、鋭利な刃物のようにきらめく(首に巻いた白いスカーフが、美しい胸を隠して残念だったが)。いつかストイックなタンゴを踊って欲しい。ずっと王子役を担ってきたが、本来はマクミラン作品にあるような暴力性が似合うダンサー。誰か齊藤のために創ってはくれないだろうか。来年の『眠り』ではダウエルに倣って、女装のカラボスを演じて欲しかったのだが。