橘秋帆(牧阿佐美)@第42回「日本ジュニアバレエ公演」2016

標記公演を見た(8月13日 文京シビックホール)。主催は公益財団法人橘秋子記念財団。牧阿佐美は現在、新国立劇場バレエ研修所の他、橘バレヱ学校、日本ジュニアバレヱ、A.M.スチューデンツ、牧阿佐美バレエ塾と、5つの教育機関に携わる教育者だが、今回の公演では、振付家としての牧に注目した。
第二部『サーカス・ヴァリエーション』(音楽・湯浅譲二)と『クラシカルシンフォニー』(音楽・プロコフィエフ)の2作。初演年は記載されていないが、動きの奔放さから、牧の若い時期の作品であることが分かる。変拍子を含む現代曲を溌剌と動きに変え、そこに生き生きとした喜びを感じさせる。上体の思いがけないアクセント、ポアントを細かく使うアレグロの早さに、牧振付の特徴が覗える。
第一部の『行進曲』は、ウォルトンエルガーヨハン・シュトラウスワーグナーの行進曲を使用した4部構成。振付は橘秋子、牧が改訂を施している。第二部作品に比べると、空間の使い方が大きく(作品の性格も異なるが)、橘秋子の構成力と世代の差を感じさせる。牧は当然、母の作品に対抗して、振付を行なってきたのだろう。フォーメイションを含む空間構成よりも、自分の身体に即した音楽的振付に、快感を感じているように見える。牧自身は、モダンな空間構成を模索してきたと言うかもしれないが。
今月末の牧阿佐美バレヱ団新作『飛鳥』は、秋子の『飛鳥物語』を土台に、牧が改訂演出・振付をする新作。母と子のどのようなコラボレーションが見られるのか、また母に対する牧の思いがどのように表れるのか、注視したい。