星野幸代著『日中戦争下のモダンダンス』(汲古書院、2018.2.6)

星野の専門は近現代中国文学と近現代中国舞踊史。概略をメモする。


【第一章】民国期中国におけるモダンダンスの受容。
【第二章】植民地時代の台湾の舞踊家、蔡瑞月と李彩娥の活動を、朝鮮の崔承喜の影響を視野に入れつつ考察。蔡は石井漠舞踊学校から石井みどり舞踊団、李は同じく石井漠舞踊学校から石井漠舞踊団で踊る。
【第三章】上海バレエ・リュス―日本統治下文化工作における小牧正英。
【第四章】1930年代に日本でモダンダンスを学び、帰国してダンスで抗日宣伝した呉暁邦について。呉は高田舞踊研究所の門下生となり、山田麗介名で舞台に立つ。その後江口・宮舞踊研究所でヴィグマンの手法を学ぶ。
【第五章】英領トリニダード・トバゴ華僑の戴愛蓮が受けた舞踊教育と、香港帰国後の抗日活動を考察。戴は、はとこがアントン・ドーリンと同じバレエ学校出身という縁で、ドーリンに、続いてマリー・ランバートに師事。ランバートからはリトミックとチェケッティ・メソッドを学ぶ。さらにヴィグマン系のレッスンを受け、ヨース=レーダー・ダンス・スクールにも入学、ラバノーテーションを学ぶ。
【第六章】呉暁邦と戴愛蓮の戦災児童教育支援と、抗日義援金のための舞踊コンサートを考察。


専門の中国文学(文芸誌・新聞を含む)のみならず、幅広い舞踊専門書を読み込んだ緻密な考察に驚かされる。モダンダンスのインターナショナルな流れ、小牧の上海での立ち位置や評価等、多くを知ることができた。