Dance Dance Dance @ YOKOHAMA 「トリプル・ビル」 2018

標記公演を見た(9月2日 横浜赤レンガ倉庫1号館 3Fホール)。フェスティバル・ディレクター ドミニク・エルヴュのコンセプトによるヒップホップ系トリプル・ビル。ジャンヌ・ガロワ振付『リバース』、東京ゲゲゲイ、Ryouta Takaji振付『東京ゲゲゲイ女学院』、カデル・アトゥ振付『要素』というプログラムで、ガロワとアトゥは、5人の日本人ブレイクダンサーを起用した。この後「ジャポニズム2018」公式プログラムとして、パリ国立シャイヨー劇場、リヨン・ダンス・ビエンナーレなど、フランス10ヶ所、スイス2ヶ所を周る。
幕開けのガロワ作品は、Hayate、Jona、Katsuya、Sakyo、Takashi が踊る。頭を床に付けたまま虫のような動きで前進し、床に幾何学模様を描くなど、ブレイクダンサーにしかこなせない振付である。特に前半はブレイクダンス特有の技術を生かした面白さがあった。足で床と対話するクラシック・バレエ、低い重心で床を使うモダンダンス、全身で床と対話するブレイクダンス、という技法の流れが見える。今年からユース五輪の正式競技となったが、普遍的なダンス技法としての可能性も大きい。後半はシンクロナイズド・スイミングの陸上版。衣裳のせいもあるが、ダンサーの技量、個性が分からないのが残念だった。
二つ目は東京ゲゲゲイ作品。四畳半私小説のような情念を背負ったMikeyを中心に、ヤンキー系女子高生4人が裏アイドルのように踊る。手前の送風機からは常に風が送られて、正面のヴィジュアルを強調。ショーダンスの気持ちよさがあった。客席にはペンライトを持った女性ファンが陣取る。途中で掛け声もかかる人気ぶりだった。振付自体は、脚をほとんど動かさず、腕のみで想いを伝える日舞の発展形である(途中ヒップホップも入ったが)。日本画の発展形であるマンガ同様、海外で正統的日本文化として受け入れられるかもしれない。
最後のアトゥ作品は、ブレイクダンスの技法と創作が当たり前のように結びついている。ダンサー個々の見せ場もあり、振付家の円熟を感じさせた。音楽や照明で自然に近い環境(地、水、火、風)を作り出し、ダンサーもその一部となって本来の身体を保っている。前半で長いソロを踊った Jona は、腕の表現に優れる。ブレイクダンスの前に他の技法を身に付けていたかもしれない。情感のこもった踊りだった。振付をこなし切れていなかったが、ソロではダイナミックな旋回で爆発した Katsuya 、振付の意図を的確に把握し、終始舞台をリードした Takashi など、ダンサーの個性がよく見える。作品の緩やかな流れの中で、高度なブレイクダンス、コンタクト・インプロのような掛け合い、武術風の動きを堪能した。