スターダンサーズ・バレエ団「MISSING LINK」2023

標記公演を見た(3月2日 東京芸術劇場 プレイハウス)。「MISSING LINK」は公演名で、第1部『01』、第2部『Degi Meta go-go』の2作品によって構成される。前者は新作、後者は 1997年『KATSUO NI SILAGA』として初演され、2002年にはドイツ公演も行なわれたレパートリー作品である。演出・振付:鈴木稔、音楽:蓜島邦明、衣裳デザイン:久保田小百合、美術(Degi Meta go-go):やまぐちけんいち、照明:足立恒、演出・振付補:小山恵美、友杉洋之という布陣。衣裳の久保田は2010年の『Degi』に団員として出演、その後 衣裳製作会社を立ち上げている。

鈴木のコンテンポラリーダンス新作は久しぶり。最近はバレエ団常任振付家として、バレエを基盤とした全幕物を振り付けてきた(『くるみ割り人形』』の雪片のワルツはコンテ仕様)。今回は蓜島と組んで、即興を交えた踊り満載の作品を作り上げた。コンセプトは「ディスコ」。往年のディスコ・ミュージックから、アフリカン・リズム、ブルースに、英語ポップス、さらにはグレゴリオ聖歌を思わせる声がサンプリングされ、鈴木振付と並走する。

0場(45分)と終幕は、オケ・ピットに陣取る蓜島のシンセサイザー、バイオリンの高木和弘による即興とのことだが、録音部分との違いは客席からは分からなかった(二日目は2人が見えるように配置)。2人の作り出すくねるような不思議な音の流れ、ホーミー風の響きは、主部の「ディスコ」とは全く異なる。蓜島の現在を示す音楽に、鈴木がどう振り付けるか見たかった気もする(終盤の即興には、ダンサーが即興で返したというが、これも分からなかった)。

鈴木の振付は、ポジションを組み合わせたポーズと素早い動きの連動。フォーサイス系バレエ語彙の拡張、鈴木らしい自由な音楽性が、エネルギッシュなダンス・シーンを繰り出していく。白い衣裳の男女7人、ベージュのミニドレス女性4人と黒ズボン男性の2人、カラフル衣裳の主要キャスト4人と男女アンサンブル、そして0場から終幕まで黒子として活躍する鴻巣明史が、入れ替わり立ち代わり登場する。深い照明に加えられた黒衝立6枚による空間作りは、多人数駆使の複雑な構造のため、やや煩雑に思われたものの、またなぜ「ディスコ」なのか、プロダクション・ノートが望まれるものの、鈴木の迸るような音楽追求と爆発的な振付を肌で感じられる新作だった。

かつて「スタダン」と言えば創作やコンテンポラリーに強く、都会的で音楽性にあふれるイメージだった。久しぶりの新作コンテで、鈴木語彙に戸惑う人々も。反面、バレエ作品では解放されないエネルギーを思い切り発散するダンサーたちもいて、バレエ団の重要な流れが蘇った気がする。

第2部の『Degi Meta go-go』は、世界地図のような白黒格子状楕円が背景。両袖には白い巨大スクリーンが吊るされて、ダンサーたちはそれらをくぐって出入りする。女性はポアント、男女とも銀と青の近未来風ユニタードを身に付けている。振付は、トム・ウィレムス風の蓜島音楽と共に、『01』よりもさらにフォーサイス系だが、鈴木の躍動感あふれる音楽性が炸裂する。

終盤の「中腰で直角に上げた右腕を前から右にグイと引きつつ前進する」シークエンスは、スタダン・ダンサーなら経験しなくてはならないアイコン的振付。方向転換しつつ全員ユニゾンで踊る迫力が素晴しかった。終演後は酸欠状態にも。今回主役を四方から取り巻く女性アンサンブルに、バレエ団の歴史の一部であるバランシンの匂いが感じられた。3人づつ4組が中央に向かい、その場歩きでポアントを交互に突き刺すソリッドな動きが面白い。構成・振付とも完成度が高く、踊り継がれるべき作品と言える。