ルパージュを見る

 東京芸術劇場でロベール・ルパージュの『ブルードラゴン』を見た(11/11)。現在の中国、中国の歴史など、ローカリティが突き詰められているが、ハイテクを駆使したローテクの味わいはいつも通り。小さなオモチャのような列車が通り過ぎる驚き。人物の瞬間移動が映画のカット割りのリズム同様、視覚的喜びをもたらす。劇場でできること、すなわち人間がその場でできることを(優れた映像の助けを借りながらも)やり遂げたいのだと思う。だが緻密な演出をそれ自体目的としていないことが、ルパージュの最大の美点。アウトローの感覚に基づく世界への批評、マッツ・エックと共通する実存の苦しみが創作の根幹にある。
 中劇場はまだ貸し小屋の匂いが染みついている。芸術監督はこれを親密な空間に変えることができるのだろうか。