2012年バレエ公演の総括

今年のバレエ公演総括をアップする。

2012年のバレエ公演を首都圏中心に振り返る(含2011年12月)。
今年はプロデューサー(または芸術監督)の顔が見える創作公演が多かった。振付家の育成および、作品保存を目的とし、他の舞踊ジャンルとの融合を目指すなど、それぞれに芸術的指針を読み取ることができる。
上演順に、デヴィッド・ビントレーによる「DANCE to the Future 2012」(振付家・平山素子 新国立劇場バレエ団)、竹内泉による「HUMAN BODY」(プログラム順に、佐々保樹・高橋竜太・平山 BALLET FOR THE 21st CENTURY)、大岩静江による「Ballet FANTASY」(アクリ・山本康介・ガリムーリン 日本バレエ協会埼玉ブロック)、久保綋一による「NEW DANCE HORIZON」(松永雅彦・ハルバート・伊藤キム・舩木城 NBAバレエ団)、篠原聖一による「Ballet クレアシオン」(大岩淑子・小林十市・山本他 日本バレエ協会)。共に説得力のある振付家選択である。
中でも佐々保樹の『ヴァリエーション・フォー・ナイン』は、日本シンフォニック・バレエの傑作、 常設バレエ団による保存が望まれる。またモダンの平山は、三部作構成、ダンサー起用の点で、アーティスティックな資質を発揮し、舞踏の伊藤キムは、バレエと舞踏という両極にある舞踊形式の相性の良さを、改めて印象付けた。
全幕の国内振付家では、上演順に、熊川哲也(Kバレエカンパニー)、鈴木稔(スターダンサーズ・バレエ団)、深川秀夫(テアトル・ド・バレエカンパニー)が個性的な『シンデレラ』で競演した他、牧阿佐美バレヱ団がオリジナル音楽による共同振付作品『時の彼方に アビアント』を再演した。
復元作品は、スキーピング版『ジゼル』(日本バレエ協会)、安達哲治=ミシューチン版『アルレキナーダ』(NBA)、ヴィハレフ版『コッペリア』(同)。19世紀バレエへの考察をそれぞれ形にした。また既出の佐々は、『ブラックスワン パ・ド・トロア』(東京小牧バレエ団)で、原型に近いニュアンスのパ・ダクションを振り付けている。
シンフォニック・バレエでは、部尚子がストラヴィンスキーの協奏曲を使って、激しいアーティスト魂を炸裂させ、山本康介がフォーレの『レクイエム』で祈りの歌を、ラヴェルの『クープランの墓』でみずみずしい音楽の流れを身体化した(日本バレエ協会)。共に抜きん出た音楽性の持ち主である。
コンテンポラリーでは、遠藤康行が「オールニッポンバレエガラ2012」で、昨年に続き、東日本大震災の鎮魂作品と、力強いトリオ作品を上演し、松崎えりが自身の主催公演で、考え抜かれた空間構成を作品化した。
海外振付家作品としては、来日、国内団体を合わせ、グリゴローヴィチ、エイフマンのソ連系、アシュトン、クランコ、マクミラン、ライトの英国系、プティの三作と歴史的作品が上演された。また現役作家のビントレーが『シルヴィア』(新国立)を、ラトマンスキーが『アンナ・カレーニナ』(マリインスキー・バレエ)を国内初演し、ドリーブ、シチェドリンの音楽保存に貢献している。
ダンサーでは、女性から上演順に、米沢唯の金平糖の精、佐藤麻利香のシンデレラ、酒井はなのジゼル、下村由理恵のジゼル、厚木三杏のアンナ・カレーニナ、志賀育恵のジュリエット、小野絢子のオデット=オディール、米沢のオデット=オディール、西川貴子の王妃、青山季可のジュリエット、小野のマノン、島添亮子のアンナ・アンダーソン、林ゆりえのジゼル、小出領子のオリガ、長田佳世(山本作品)。
男性では、吉本泰久のウルリック、秋元康臣のシンデレラの王子、中家正博のフロロ、山本隆之のカレーニン、キム・セジョンのロミオ、菅野英男のジークフリード、福岡雄大のデ・グリュー、藤野暢央のヒラリオン、吉本のエロス、古川和則のオライオン。
コンテンポラリーでは五月女遥(平山作品)、中村恩恵(キリアン作品)、李民愛(伊藤作品)。海外では、アタナソフのドン・キホーテ、オブラスツォーワのシルフィード、マッキーのオネーギン、ロパートキナアンナ・カレーニナが、優れた造形を誇った。  『音楽舞踊新聞』No.2888(H25.1.1/11号)初出