長谷川六『曼荼羅』

標記公演を見た(9月12日 ストライプスペースM&B)。
今井紀彰の曼荼羅のようなコラージュ作品と、柳田郁子の赤と生成りの布造形作品が置かれた空間でのダンス公演。前半は坂本知子の構成で、坂本と加藤健廣、上野憲治が、走り回り、ぶつかり合い、ころげ回り、踊る。坂本の緻密な肉体の輝き、一秒たりとも躊躇を見せない集中した動きが素晴らしい。加藤は肉体の虚ろな部分が他者との接点になっている。上野は感じはよいが、まだ見られる体とは言えない。
後半は長谷川のソロ。黒いジャージ地のロングドレスで、ギャラリー前方部分中央に位置をとる。たちまち長谷川の気が空間に満ちて、見る側の身体が自由になる。両足を踏ん張り、やや前傾、掌を上に両腕を前方下に差し伸ばし、少しづつ動く長谷川。ロマン派をくすませたような不思議なピアノ曲の高まりと共に、右回りに空間に入り込んだ。曲はグルジェフアルメニア生まれの思想家、精神指導者で、グルジェフ・ムーヴメントと呼ばれる舞踏を残す)の弾く瞑想のための音楽とのこと。メロディに身を委ねるロマン派的な熱さは、これまで感じたことがなかった。終盤、柳田郁子自らが長谷川の体に、生成りのビラビラした布を付けていく。微動し続ける長谷川、布の形を直し続ける柳田。最後にビラビラで完全に顔を隠した。ケイタケイが服をめでたく重ね着するのとは違って、得体のしれない豪華な異人(貴人)が突っ立っている。柳田の愛、柳田に肉体を差し出す長谷川の愛の一致だった。