新国立劇場バレエ団「DANCE to the Future〜 Second Steps」

標記公演を見た(12月7日 新国立劇場小劇場)。団員が同僚に振り付けた作品を発表する場である。芸術監督ビントレーのダンサー達への愛情から生まれた企画で、公演は言わば孵卵器。ビントレーがセレクトし、アドヴァイスし、上演順を考えるという、ビントレー自身の作品でもある。
貝川鐵夫の『フォリア』(音楽:アルカンジェロ・コレッリ)が幕開けで、福田圭吾の『Side Effect』(音楽:ロバート・フッド)がトリ。両者とも個性を十全に発揮した動き、練られた構成の自立した作品だった。貝川の優れた音楽性から生み出される自然な振付、フォーメイションが素晴らしい。キリアン、ドゥアト系のネオクラシックである。小野絢子、福岡雄大の主役組が入っているが、貝川の体臭を感じさせたのは、前回も出演した輪島拓也。ビロビロと広がるオーラ、濃密な存在感。妙な味のダンサーである(時々熊川味)。堀口純と向かい合って徐々に近づくシークエンスは、危険な香りさえ漂わせた。小野の無音のソロから始まり、それぞれのソロ、3組のデュオ、バラバラの方向を向いた総踊りなど、見ているだけで嬉しくなる。凄いと思わせないところが、貝川の個性。音楽を体全体で味わい、それを動きに変換する喜びにあふれている。
一方、叔母の振付で鍛えられた福田にとって、創作は家業のようなものだろうか。コンタクト・インプロとブレイクダンスを合わせたハードなコンテ。八幡顕光、福田、高橋一輝の技巧派トリオに、五月女遥の紅一点が加わった。その五月女の凄さ。これまで平山素子、中村恩恵作品で目の覚めるような踊りを見てきたが、今回も圧倒的。胸まで割れた動きに驚かされる。クラシックでもオールマイティ、しかし体が弾けるほど大きく見えるのはコンテ。きっちり隅々まで予想を超えて動く爽快な踊りだった。
この2作の間に、マイレン・トレウバエフ、広瀬碧、今井奈穂、小笠原一真、休憩を挟んで宝満直也、アンダーシュ・ハンマル、宝満作品が並ぶ。いずれも個性や創作への意欲がはっきり打ち出された作品だった。トレウバエフは男白鳥のキャラクターを際立たせたクラシック・ソロ、広瀬はかわいいリリカルな振付、今井は表現主義的コンテ・ソロ、小笠原はエロティックで怖い振付、宝満は動きを作り出そうとする足掻きのソロ、ハンマルは幾何学的なフォーメイションと立体的な動きの背後に、確固たる理屈がある振付、宝満2はボーリングから始まるコント風デュオだった。
ダンサーは上記輪島と五月女に加え、小野寺雄の美しい白鳥ぶり、輪島と原健太の濃い味、大和雅美の正確な動き、小柴富久修のとぼけた味と間の良さが印象的だった。
ビントレーの企画なので、来季はどうなるのか。これだけ継続してもらうのは無理だろうか。または大原永子セレクションを新たに始めてもいいかも。せっかく覇気ある男性ダンサーが増えてきたのだから、創作企画をぜひ続けてほしい。