Noism01『PLAY 2 PLAY―干渉する次元』

標記公演を見た(1月24日 KAAT 神奈川芸術劇場)。07年の作品を改訂したもので、初演ダンサーは井関佐和子一人。今回は振付の金森穣もダンサーとして加わった。
シアター1010で見た記憶とはかなり違った印象。客席が向い合せになっているのは同じだが、もっと互いに近かったような気がする。半透明の三角柱9本を挟んで、シンメトリーにダンスが行われていたような。旗揚げ作品『SHIKAKU』の時と同じように、すべてを見ることができない解放感があった。今回は劇場の構造もあって、向かいの客席も舞台装置のような感じ。さらに記憶と違うのは、ルイーズ・ルカヴァリエ並みの聖なる怪物と化した井関が中心になっていること。男でも女でもあり、不可侵の存在へと成長している(妙な連想だが、佐々木大の両性具有感と似ている)。金森と踊る圧倒的なデュオでは女、その他の男と組む時は中性、女と組む時(踊る時)は男。NDT2での音楽的で勘のいい少女の踊りから、美しく力感のある大人の踊りへ。日本人コンテンポラリー・ダンサーの一つの達成だろう。対する金森は同じく抜きんでたダンサー。空間を一気に変えることができる。見た目、踊りの精度、華が揃ったスターダンサー。金森と井関のデュオは、このまま時を止めて保存しておきたい歴史の結節点である。
振付はかつての無機質な人工美から、濃厚なエロティシズムを帯びるようになった。キリアンもドゥアトもそうだけど、集団が持続するとエロティックになっていくのだろうか。ダンサーたちはかつての島地保武、青木尚哉、平原慎太郎、宮河愛一郎と比べると、振付への抵抗感が少ない。ほとんどがバレエの肉体で、金森のニュアンスを出すことができるし、複雑なパートナリングもこなせるため、作品としてはまとまるが、金森の一人勝ちのようにもなる。女性ダンサーは井関を前に、個性を出すことは難しいだろう。
金森の作品を見ることは、金森が日本の舞踊界で孤軍奮闘している姿を見ることでもある。劇場付舞踊団を初めて一から作った男(給料制のプロのバレエ団は熊川哲也が作っている)。両者ともダンサーの職場を日本で作りたいという思いから、個人の力量でカンパニーを作り上げた。金森はその後、日本の文化行政の問題点を認識、どのような方向で劇場文化を定着させたらよいのか考え続けてきた(Noism設立10周年記念会見―Noismサポーターズ会報24号参照)。現状ではNoismの後に続くカンパニーは現れず、依然としてダンサーたちはプロのダンサーになるために海外に流出しているが、当のNoismには台湾のダンサーLin Yi Chienが加わった。「2009年の台湾『NINA』公演を見て、Noismスタイルにすごく惹かれた。とても刺激的で独自の舞踊観があり、大きな挑戦ができると思った。国立台北芸術大学を卒業し兵役を終え、入団できてとてもハッピー。がんばりたい。日本語勉強中」(同会報)。