テロ・サーリネン『MESH』@埼玉舞踊協会

標記公演を見た(2月2日夕 彩の国さいたま芸術劇場大ホール)。埼玉舞踊協会がフィンランド振付家テロ・サーリネンに委嘱した新作である(国際交流アドヴァイザー 立木菀子)。
オーディションで選ばれたダンサーは、男性9人、女性17人。一ヶ月の稽古期間を経て、世界初演となった。幕が上がると、上手床に縦長のライトが奥に伸び、笠井瑞丈が客席に背を向けて立っている。黒い暗幕の切れ目から明かりが射している格好。中央にソリスト集団、下手一列にアンサンブルが並ぶ。照明は横ライト使用のやや暗め、音楽は弦(琴や三弦の響きに似る)と男声合唱(読経に似る)。笠井は「在る」のみだったが、その他は常に作り出されたムーヴメントを実行しており、久しぶりに真正のダンス作品を見た気がした。
懐かしさは笠井の佇まいのせいかもしれない。父(叡)とは違った清潔なオーラ。常に居ることへの真摯な姿勢。笠井が歩き、消え、再び現れ、最後には色とりどりのフラッシュ・ライトを電流のように浴びて、しなやかな肢体を慎ましく剝き出しにした。笠井のいる空間で、二つのアンサンブルが隊形を変え、時に鈴木竜の土俗的なソロ、女性二人の推手デュオを交え、踊り継いでいく。東洋武術の呼吸やアフリカ風の足踏みが、西洋的な空間構成と合体し、東西の融合があっさりと実現した。本来は日本人舞踏家がやるべき仕事だと思う(山崎広太がかつてやっていたが)。
レパートリー化すべき作品。埼玉舞踊協会は創作を重んじる集団として、今後もこうした企画を続けるべきだろう。