1月に見た振付家・ダンサー2021

島地保武日本バレエ協会全日本バレエ・コンクール ガラ・コンサート」(1月23日 新宿文化センター)

コロナ禍で開催されなかった「全日本バレエ・コンクール」に代わり(訂正 夏の予定が、延期された)同コンクールより輩出されたダンサーたちのガラ公演が開催された文化庁 次代の文化を創造する新進芸術家育成事業)。歴代入賞者の華やかなヴァリエーションや創作が並ぶなか、最後を飾ったのが、酒井はな(89年ジュニア部門入賞)とパートナー島地保武による『In other words』(振付:島地保武)。二人はこれまでも「アルトノイ」というユニット名で作品を上演してきたが、今回はバレエ協会という場所柄か、酒井を生かす振付となっている。

小品ながら3場に分かれ、1場は脱力自然派の日本語女声歌(音源記載なし)に乗せて、二人の出会いを描く。原始人(未開人?)風オカッパ頭、肌色オールタイツの島地が、シモテから直立でギコギコと滞る動きを見せる。中央奥から、お下げ髪、カラフルな上着の酒井が、後すざりしながら手前へ。互いにぶつかると、なぜか四つん這いになった島地の背に酒井が立つ。バランスを取りながら上着とズボンを脱ぎ、肌色オールタイツに。酒井も島地レベルの原始人になったということか。島地は四つ足歩行でカミテへ入る。

音楽はバッハ(?)に切り替わり、酒井が中央でフォーサイス崩しを伸びやかに踊る。マルコ・ゲッケを踊る時のような、開放的な喜びが体に広がり、バレエとコンテを両立させてきた 酒井の来し方を思わせる。直立歩行に戻った島地との大小ユニゾンは、パートナーであることの喜びにあふれていた。島地の太いしなやかさ、酒井の引き絞られた繊細な切れ味が、音楽と同期し、同じラインを描き出す。二人のユニゾンを、初めて見た気がした。

甘いアメリカン・スタンダード(女声)が流れると、二人はハッと驚く。今度は向かい合っての愛のパ・ド・ドゥ。抱っこ回転で、酒井のお下げが飛び跳ねる可愛らしさ。最後はヒコーキぶん回し回転で、二人共うつ伏せに。島地の「ブタイ?」という発語で、終幕となった。島地の作りたい世界は明確である。屈折した照れ隠しを含みながらも、酒井との原始的な愛の形を初めて踊りにした。

舞台を見ながらの妄想。金森穣振付で、酒井と島地が踊り、島地振付で、井関佐和子と金森が踊る。こうすれば、島地は照れずにパ・ド・ドゥを踊れるし、井関と金森は、別次元の関係を結べるのではないか

 

吉﨑裕哉日本バレエ協会全日本バレエ・コンクール ガラ・コンサート」(1月23日 新宿文化センター)+ 現代舞踊協会「新進舞踊家海外研修員による現代舞踊公演」(1月26日 新国立劇場小劇場)

吉﨑裕哉は島地同様、演劇学科出身で、Noism 在籍経験がある。大きさとスター性は共通するが、資質は対照的。島地は即興・振付をするのに対し、吉﨑は振付家の意図に沿う踊り手である。驚いたことに吉﨑は、日本バレエ協会現代舞踊協会文化庁 次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」公演の両方に、二日を挟んで出演した。

日本バレエ協会では、キミホ・ハルバート振付『INBETWEEN REALITIES』。ペルトの音楽によるスタイリッシュなコンテンポラリーダンスを、女性二人を相手に踊る。「その場にいる」強烈な存在感、女性と自然に絡む開かれた身体、真摯な振付遂行で、作品に暖かな血を通わせた。

現代舞踊協会では、土田貴好・小倉藍歌振付『giving』。「3月満月」の自然派音楽(生演奏)をバックに踊る6人の一人。切り株の上に立ったり座ったり、男性同士ハグしたり。土田・小倉の創るユートピアの中で、吉﨑はこれまた自然に存在する。ただし土田と相対するエッジの効いた振付では、共に Noism での蓄積を思わせる切れ味があった。真っ直ぐに振付を遂行する姿勢は、ハルバート作品と同じ。さらには、山田うん演出・振付『NIPPON・CHA! CHA! CHA! 』での、熱い演技と踊りを思い出させた。