牧阿佐美バレヱ団「プリンシパル・ガラ」

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牧阿佐美バレヱ団「プリンシパル・ガラ」が文京シビックホールで開催された。母体の公益財団法人橘秋子記念財団と、文京区及び公益財団法人文京アカデミーが事業協定を結んだ記念公演である。「プリンシパル・ガラ」と銘打たれた通り、バレエ団の主役級、青山季可、吉岡まなみ、京當侑一籠、菊地研、中家正博、清瀧千晴が顔を揃えたが(伊藤友季子は故障で降板)、バレエ団初演作を若手に宛てるなど、若手お披露目公演のニュアンスも強い。二部構成の前半は、バレエ団の貴重なレパートリー『コンスタンチア』、後半は有名なコンサート・ピースが5本続けて上演された。


『コンスタンチア』(36、44年)はアメリカの優れたダンスール・ノーブルで振付家のW・ダラーによる作品。バランシンと協力して創った『コンチェルト』を後に改訂したものである。ショパンの『ピアノ協奏曲2番』に乗せて、ショパンと憧れの歌手コンスタンチア、恋人ジョルジュ・サンドの関係が心象風景のように描かれる。コンスタンチアの青山、ショパンの京當、サンドの吉岡は役をよく把握、アンサンブルは叙情的なスタイルときめ細やかな音楽性で統一されていた。ドラマよりも音楽を強調するのがバレエ団の特徴。シンフォニック・バレエの趣が強かった。


後半は、米澤真弓と清瀧による『パリの炎』パ・ド・ドゥ、日高有梨とラグワスレン・オトゴンニャムによる『ジゼル』第二幕よりグラン・パ・ド・ドゥ、織山万梨子と中家による『エスメラルダ・パ・ド・ドゥ』(B・スティーヴンソン振付、団初演)、中川郁、塚田渉、清瀧による『ワルプルギスの夜』(ラヴロフスキー振付、団初演)、そして青山と菊地、バレエ団による『ドン・キホーテ』第三幕抜粋である。


青山のプリマとしての貫禄と観客を祝福する笑顔が素晴らしい。また米澤の正確な技術、織山のコケットリー、中川の伸びやかさと、若手女性陣が個性を発揮し、今後に期待を抱かせた。茂田絵美子、久保茉莉恵は主役級だが、今回はアンサンブルのレベルアップ役に徹している。男性陣の行儀のよいサポートも団の特徴。清瀧の爽快な跳躍、塚田の豪快なリフトと踊りも印象深い。


ティーヴンソンの『エスメラルダ・パ・ド・ドゥ』オリジナル版など、後半には興味深いプログラムも含まれるが、クラシックのみのせいか、構成がやや単調に思われた。今後、文京区民にどのような作品を提供するのか、ロマンティック・バレエからコンテンポラリー作品まで踊ってきたバレエ団として、その文化的啓蒙に期待が高まる。(4月21日 文京シビックホール) *『音楽舞踊新聞』No2928(H26.6.11号)初出