東京シティ・バレエ団「ラフィネ・バレエコンサート」2014

標記公演評をアップする。

東京シティ・バレエ団が恒例の「ラフィネ・バレエコンサート」を催した(主催・公益財団法人江東区文化コミュニティ財団)。創作バレエ2作、間に古典パ・ド・ドゥ集を挟んだ三部構成。多彩なプログラムで、地元江東区民に舞踊の喜びを提供している。


創作はベテランと若手振付家の競演となった。石井清子の『ジプシーダンス』と、小林洋壱の『Dance lives on』である。最終演目の石井は得意のキャラクターダンスで、ジプシー音楽(ロビーラカトシュとアンサンブル)をドラマティックに視覚化した。


石井振付の特徴は鋭い音楽性と、濃厚な演技を溶かし込んだキャラクターダンスにある。今回も女性ダンサーの妖艶な身振り、男性ダンサーの美しく粋なラインが、ロマ達の暗いパトスを浮き彫りにした。情感たっぷりのパ・ド・ドゥを踊った若林美和と黄凱、男性アンサンブルを率いた佐藤雄基、練達の女性アンサンブルが石井世界を具現。石田種生、金井利久の創作物と共に、バレエ団の貴重な財産である。


バレエ団現行の座付き振付家はバレエマスターの中島伸欣。その濃密なパ・ド・ドゥは、中島の身体から生み出された一つの奇跡である。今回幕開け作品を担当した小林の美点も、自らの体臭を感じさせる等身大のパ・ド・ドゥにある。


『Dance lives on』はマイケル・ジャクソン他をクラシカルに編曲した音楽で、男女群舞が踊る(生演奏・1966カルテット)。ジャズダンスやモダンダンスの語彙をクラシックに組み込んで、現代性を加味しようとした振付だが、残念ながら音楽と拮抗するだけの、またバレエダンサーに見合うだけの強度を備えているとは言い難かった。見せ場のパ・ド・ドゥも、小林の身体を感じさせないままに終わっている。もう少し個性の追求を期待したい。ダンサーでは、パ・ド・ドゥ薄井友姫の爽やかさ、同じく高井将伍の動きの巧さ(ムーンウォークの素晴らしさ!)、アンサンブル松本佳織の優れた音楽性が印象的だった。


古典パ・ド・ドゥ集は3組。『ラ・フィユ・マル・ガルデ』より第三幕のグラン・パ・ド・ドゥを中森理恵と岸本亜生、『ダイアナとアクティオン』を佐合萌香と内村和真、『白鳥の湖』より黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥを佐々晴香と黄が踊った。いずれも適役で、それぞれ牧歌的、古典的、劇的なパ・ド・ドゥの面白さを味わうことができた。(5月25日 ティアラこうとう大ホール) *『音楽舞踊新聞』No.2928(H26.6.11号)初出