新国立劇場「ダンス・アーカイヴ in Japan」2014

標記公演を見た(6月7、8日 新国立劇場中劇場)。制作協力は現代舞踊協会。面白かった。『日本の太鼓』(振付:江口隆哉)を除いて、現在のダンスとして見ることができる。ダンサーがそのように踊っているからだろう。
最も面白かったのは、小森敏振付の『タンゴ』。藤井利子が振り移しをし、柳下規夫が踊った。イサーク・アルベニスの『Tango in D』に乗って、白髪の柳下が踊る。登場した時点で、既に只者ではなかったが、斜め前方へステップを踏んだ途端に、柳下の世界となった。音楽は思い出せるのに、振付は思い出せない。ただひたすら、その飄々とした動きを注視するのみだった。小森振付の特徴は分からないまま。それでもいいと思わせる喜びがあった。
もう一つは平山素子と柳本雅寛振付の『春の祭典』。ストラヴィンスキー自身が編曲した二台のピアノ版の生演奏が素晴らしい(土田英介、篠田昌伸)。二人だけで踊るため、ピアノ演奏のみを聴く場面が出てくるが、今回は幸福だった。平山は体力的にきつそうに見えたが、いささかも手を緩めない。パートナーは大貫勇輔に変わり、アクロバティック(H・アール・カオス的、マクミラン的)なデュオが変質した。柳本は包容力があるので、平山は姫になれたが、大貫は容赦のない男。自らも輝き、相手を挑発するので、対等のデュオになった。作品の可能性が広がった感じ。ただ、誰がこれを踊れるだろうか。新国立の奥田花純くらいしか、思い浮かばない。昨年の『ボレロ』を見て、平山の見方が分かった気が。音楽的にとんでもなく細かいところが、ビントレーと共通するのだろう。