東京シティ・バレエ団「TOKYO CITY BALLET LIVE 2015」

標記公演評をアップする。

東京シティ・バレエ団恒例の「TOKYO CITY BALLET LIVE」が、大ホールに場所を移して開催された。上演順に、石井清子、小林洋壱、中島伸欣の座付き振付家作品、さらにゲスト振付家としてレオ・ムジックを招いての創作集である。座付きの良さはダンサーを知り抜いていること、ゲストの良さはダンサーの意外な側面を引き出すことにある。創作を重視するバレエ団の意気込みを感じさせるプログラムだった。


幕開けの石井版『ボレロ』は84年初演。シティの女性団員が、軒並み踊ってきた歴史的作品である。女の情念がこもった美しいライン、和風のニュアンスが滲む腕のみの踊り、クライマックスに向けての民族舞踊的一体感が、定着したレパートリーの力強さを示していた。


小林振付『Without Words』は、マーラーの「アダージェット」を用いたデュオ作品。足立恒(照明)のブルーグレーがニュアンスの深い空間を作る。チョ・ミンヨンの控え目な男らしさ、佐々晴香の情感豊かで明晰な踊りに、力みのない等身大の関係が映し出される。日常性を手放さない美的な作品だった。


同じデュオでも中島の『鏡の中で』(ペルト曲)は、まずコンセプトありき。白い襞のある布を背景に、白のオールタイツに黒テープを巻き、頭を白く固めた志賀育恵と黄凱が踊る。ただし美的というよりは内的。何か熱いものがあって、こうでなければならないという中島の思いが迸る。それが何かはよく分からないが。中島の体臭が充満する創造的な作品だった。


ムジック振付『死と乙女』は、ヴィターリの「シャコンヌ」とシューベルトの『死と乙女』を用いたドラマティックな作品。男女共に黒ずくめの衣裳で、前半はポアントで踊る。バロックの濃厚な退廃美から、自然に立脚するロマンティシズムへの振り幅は、前作『crash the lily』でも覗えたムジックの個性である。 大石恵子の情念、佐々のダイナミズム(リフトされまくりだった)、キム・セジョンの美しいライン、高井将伍の飄々とした男っぽさ、玉浦誠の切れ味の鋭さと、個性を生かした主役の踊りに、全力疾走のアンサンブルが加わり、会場をめくるめく陶酔感で包んだ。大人っぽいゴージャスな女性陣は、創作を踊り継いできた同団の美点である。(2月15日 ティアラこうとう大ホール) *『音楽舞踊新聞』No.2947(H27.4.15号)初出