神奈川ブロック『シンデレラ』2015

標記公演評をアップする。

日本バレエ協会関東支部神奈川ブロックが設立35周年を記念して、『シンデレラ』を上演した。音楽はプロコフィエフ、演出・振付は夏山周久による。夏山版は、土台のザハーロフ版に、難度の高いソロとコミカルな味わいを加えたもの。王子登場以降の、友人やピエロを交えた闊達な踊りに見応えがあった。序盤は演技が多く、難しい場面が続くが、継母役の冨川祐樹が新国立劇場での経験を生かして、舞台を牽引した。品が良く、母親らしい暖かさにあふれた女形で、新境地を拓いている。


主役のシンデレラには樋口ゆり。確かな技術、清潔な脚技に、親密な雰囲気を漂わせて、慎ましやかなシンデレラを造型した。対する王子は清水健太。共に元Kバレエカンパニーの精鋭である。清水は規範に忠実な美しい踊りに覇気を加え、回転技の多いボリショイ版の勢いを体現した。女性を美しく見せるパートナーだが、この版に多用されるアクロバティックなサポートも果敢に実行、熟練の王子役であることを証明している。


ないがしろにされながらも妻を見守る気の弱い父親には、ベテランの小原孝司。姉娘の大滝よう、妹娘の朝比奈舞は踊り、芝居共に達者だった。仙女・山田みきの気品、ピエロ・荒川英之のきれいで可愛気のある踊り、舞踊教師・浅田良和の切れの良さなど、脇役陣も充実。四季の精(浅井蘭奈、飛沢由衣、岩崎美来、寺田恵)を始め、ブロックのダンサー達も日頃の研鑽の成果を伸び伸びと披露した。


指揮は前回同様、冨田実里。新国立劇場バレエ公演で副指揮者等を務める新鋭である。舞台とよく呼応し、俊友会管弦楽団から、プロコフィエフの胸に迫る美しさを引き出している。(1月18日 神奈川県民ホール) *『音楽舞踊新聞』No.2943(H27.2.15号)初出