スターダンサーズ・バレエ団『ジゼル』2015

標記公演評をアップする。

スターダンサーズ・バレエ団が創立50周年を記念して、ピーター・ライト版『ジゼル』を上演した。共催は文京シビックホール(公益財団法人文京アカデミー)。ライト版の特徴は、動きの全てに意味付けがあり、細やかなドラマの流れが目に見える点にある。ヒラリオンとベルタのセリフが聞こえるようなマイムに始まり、バチルド、クーランド公、狩猟長の闊達な演技など、レパートリーの定着を裏付ける仕上がりだった。


森の詩人ピーター・ファーマーの墨絵のような美術と淡い色合いの衣裳が、繊細なロマンティシズムを醸し出す。ただし大きいホールに変わったせいか、以前よりも照明が暗めに感じられた。


ジゼルは初日が林ゆりえ、二日目が新人の西原友衣菜、アルブレヒトはそれぞれ吉瀬智弘とゲストの浅田良和が勤めた。その初日を見た。林はライトに見出され、19歳でジゼルを踊った逸話の持ち主。一幕の情熱的少女から、母性でアルブレヒトを包む終幕までの真情あふれる演技、鋭い音楽性に裏打ちされた一拍伸びるラインが記憶に鮮やかである。今回は中堅らしい落ち着いた演技。特に狂乱の場面ではよく練り上げられた解釈を見せた。ただ全体に手の内に納まった印象が残る。林らしい疾走するジゼルを期待したい。


対する吉瀬は、やんちゃ系の王子として、また無意識の牧神として個性を発揮してきた。今回も時折やんちゃな気質を覗かせたが、全体的には真っ直ぐ育った貴族の子息。堂々たる佇まい、癖のない明晰な踊りで、器の大きいアルブレヒトを造型した。


脇も充実。大野大輔の肚の据わったヒラリオン、天木真那美の切り返し鮮やかなバチルド、なぜか大きく見える東秀昭のクーランドと、演技を見る楽しみがあった。ミルタの佐藤万里絵は肌理細かい艶のある踊り、ウィリ達は周囲に合わせると言うよりも、個人で音を取る自立したダンサー集団だった。


テアトロ・ジーリオ・ショウワ・オーケストラ率いる田中良和が、舞台に寄り添った指揮でドラマ作りに貢献している。(2月28日 文京シビックホール) *『音楽舞踊新聞』No.2946(H27.4.1号)初出