NBAバレエ団『HIBARI』2015

標記公演を見た(6月13日 メルパルクホール)。美空ひばりの生涯を、ダンス、歌、ナレーション、芝居、生前の映像で綴る。『悲しき口笛』、『リンゴ追分』から、『真赤な太陽』、『悲しい酒』、『愛燦燦』、『人生一路』など、最後に『川の流れのように』でカーテンコールが行われた。全15曲、1時間10分の作品。
美空ファンが駆けつけているのか、映像に対して、拍手と合いの手のような歓声が上がる。その異様な興奮の中で、和央が宝塚仕込みのスレンダーな姿態で、凛々しいナレーションと歌を、バレエ団がダンスと芝居を見せる。リン・テイラー・コーベットの構成・演出は、映像の使い方など、こなれていて巧み。但し、振付はオリジナリティを追求する方向にはなく、ダンスのみを取り出すと物足りなさが残る。音楽解釈の反映も、もっとあってしかるべきと思う。しかし作品全体から、誠実さ、真摯さといったコーベットの資質が感じられて、胸が熱くなった。ダンサーも適材適所で使われている。特に『悲しい酒』の関口祐美、『愛燦燦』の大森康正は、本来の美質が十全に生かされている。何よりも、コーベットが関口を見出したことが嬉しい。
カーテンコールで観客は総立ちになった。必ずしも美空ファンではないような。昨年の『ドラキュラ』でも総立ちだったが、その客が付いているのだろうか。だとしたら、久保綋一芸術監督の力である。
帰り道、清々しい気持ちで大門まで歩いた。ダンサー達が、日本人として当然踊るべき曲を踊り、個々の持てる力を発揮していたから。全国ツアーを組めばいいと思う。