第二回「花柳寿楽舞踊會」2015

標記公演を見た(11月3日 国立劇場小劇場)。演目は長唄『二人椀久』と、長唄『安達ケ原』。前者は寿楽の父、二世花柳錦之輔の振付により、片岡孝夫(現仁左衛門)と坂東玉三郎が初演した。後者は寿楽の祖父、二世花柳壽楽の振付。曲は、二世杵屋勝三郎が明治三年に作曲したもので、詞章は多くを能によっているとのこと(プログラム)。
『二人椀久』の寿楽は、出の場面から憂いと狂おしさが入り混じった体だった。今回の公演のため指導に当たった仁左衛門は、自らの初演時、監修者の先代壽楽より「踊り手になってはいけない。椀屋久兵衛が戯れていなければいけない」と、厳しく言われたという(プログラム)。その通り、ただ体が揺蕩っているように見えた。愛情深い松山太夫片岡孝太郎との連れ舞いは、一転して愛らしく、喜びにあふれる。太夫の幻が消えた後の嘆きの姿は美しく、二枚目の気品が備わっていた。
一方『安達ケ原』は、前シテの老女が素晴らしかった。ちんまりと畳まれた体、宙に吊られたような枯れた動き。5月に見た『釣狐』を思い出した。二枚目よりも、老け役を演じる方が、寿楽の体が喜んでいるような気がする。その工夫が楽しく、それを見ている方も楽しかった。鬼女になってからは、体を起こし、能のような足運び。癇の強い突き抜けた眼差しで性格を表す。ワキの阿闍梨祐慶は花柳基。真っ直ぐな精神、実直な踊りで、鬼女を退治する。最後の晴れ晴れとした立ち姿が爽快だった。資質の異なる二人が、阿吽の呼吸で立ち回る面白さ。楽しかった。