英国ロイヤル・バレエ団『ロミオとジュリエット』『ジゼル』2016

標記公演を見た(3月29、31日 ロイヤル・オペラハウス / 6月18、22、24、26日 東京文化会館)。配役は日程順に、オシポワ(G)とゴールディング(A)、ヌニェス(G)とムンタギロフ(A)、オシポワ(J)とゴールディング(R)、ヌニェス(G)とムンタギロフ(A)、オシポワ(G)とゴールディング(A)、カスバートソン(G)とボネッリ(A)。オシポワをよく見ているのは、面白いダンサーだと思っているから。ボリショイ時代からロマンティック・バレエには定評があったが、生で見たのは、『明るい小川』や『パリの炎』パ・ド・ドゥなど、バリバリ踊る演目だった。アレクサンドロワと並んで、脚の筋肉に目が行ったものだ。そんな人がジゼルではどうなるかと思い、またジュリエットは、ロンドンでのジゼルを見て、どうなるかと思って見ることにした。ムンタギロフは、新国立のシーズン・ゲスト・プリンシパルなので、所属バレエ団での舞台を見ておきたかったから。カスバートソンは、ジュリエットの評判がよく、唯一英国人の主役なので、見た方がよいと思って見た。
やはり、ダントツでオシポワが面白い。一瞬たりとも目が離せない。ジュリエットにしても、ジゼルにしても、体がほぐれ、役を生きている。ジュリエットが仮死するときには、本当に体が痙攣していた。作り込まれた演技も素晴らしいと思うが、生きた体をバレエで見られるのは、もっと素晴らしい(つまりとんでもなく技術があるということ)。
演出について。マクミラン版『R&J』のマキューシオが、道化に近いのが気になったのと(もっと知的でシニカルでは)、ライト版のジゼル自殺。剣で突いてから亡くなるまでのシークエンスが長く、少し不自然な感じがした。ヌニェスが血まみれのマイムをやっていたので、そう思ったのかもしれない。それからバチルドの造形。ベルタが「娘は踊ると死ぬのです」のマイムをした直後、バチルドが「踊りなさい」と言って、ジゼルの一幕ソロが始まる。あまりに非情では。本来のバチルド像(初演版台本)からも懸け離れている。
ベルタのウィリ・マイムは、カルサヴィナ由来とのこと。現地では、クリステン・マクナリーのマイムにブラボーが飛んだ。英国人はマイムが好きなのだと、改めて思った。
印象に残ったダンサーは、パ・ド・シスのジェイムズ・ヘイ、モイナのオリヴィア・カウリー、ズルマのベアトリス・スティックス=ブルネルとヤスミン・ナグディ(両者美しい黒髪)。ミルタは現地で見たヌニェスが素晴らしかった。
演奏は、現地で映像収録を行なったロイヤル・オペラハウス管弦楽団が、圧倒的だった。コンマスを初め、個々の楽器のトップがソリスト級の腕前。音楽だけでも満足させられる。指揮のワーズワースは、踊りに合わせるタイプだが、二幕のウィリ達のアラベスク交差は怖しく早く、その飛び交う姿を想像させた。