松崎すみ子@バレエ団ピッコロ55周年記念発表会2016

標記発表会を見た(7月16日 練馬文化センター)。ほぼ5時間に及ぶ記念発表会。定番のパ・ド・ドゥやヴァリエーションに加えて、松崎すみ子の振付作品が随時入り、最後に松崎えりの振付を一部加えた『カルミナ・ブラーナ』が上演された。今回は昨年亡くなられた夫君、松崎康通氏の追悼発表会でもあった。康通氏によるメルヘンチックなプログラム表紙絵が素晴らしい。人間、妖精、動物が楽しげに、自由な時間を生きている。夫君のこうした世界をバックに、松崎は作品を思う存分作っていたのか、と思わされた。
男女PDD「春風にのって」や少女デュエット「姉妹」には、松崎のポジティヴな世界観がよく表れている。踊る子供たちも、まず存在が肯定され、その上で、松崎の振付に導かれて、愛にあふれた世界を作り出している。いわゆる児童舞踊の達者さは全くなく、自然に身の丈で踊る。結果として、その子供の最もよい所が引き出され、観客はイデアのような子供らしさ、少女らしさを舞台で見ることになる。現在を肯定する松崎の真っ直ぐな視線、人間そのものを愛する松崎の力を、改めて感じた。
カルミナ・ブラーナ』は、作品の原点に立ち返ったような祝祭的空間だった。大人から子供まで、音楽に乗って次々に踊る。篠原聖一、堀登、小原孝司によるベテラントリオは、それぞれの個性である、美しさ、クリティカルな動き、大きさを発揮。篠原、堀と組んだ菊沢和子の江戸前の味わい(ブルノンヴィルが合いそう)、中村えみと小原の情感豊かなパ・ド・ドゥなど、振付の妙味も味わうことができた。松崎えりと増田真也のパートは毛色が異なるが、それさえも包み込むのが松崎の世界。磁場を作る太陽のような存在と言える。
発表会には、下村由理恵(篠原作品)、西田佑子・黄凱(『白鳥の湖』第2幕)、交流のあるベルギーのジョゼ・ニコラ・バレエスタジオ生たち(創作『Swan Lake』より)が参加し、55周年を華やかに祝った。