山崎広太@ダンスカフェサロン2019【追記】

山崎広太が、《ダンスカフェサロン in あうるすぽっと2018 》シンポジウム「コンテンポラリーダンスの可能性」に、講師及びパネリストとして参加した(1月6日 あうるすぽっと会議室)。

同サロンは、あうるすぽっと、豊島区、ダンスカフェの主催。今年度の最終回である(全6回)。第一部は山野博大(舞踊評論家)の基調報告、山崎広太(振付家舞踊家)のNY滞在記、第二部は座談会「21世紀のコンテンポラリーダンスと劇場の関係」。座談会のパネリストは、永利真弓(舞台芸術プロデューサー)、岸正人(豊島区立芸術文化劇場解説準備室)、山野、山崎、司会を後藤美紀子(ダンス制作/ダンスコミュニケーター)が担当した。それぞれの立場から見識ある発言を聞くことができたが、その場で言葉を抽出する強度が高かったのが、唯一の実演家 山崎である。

山崎は以前、白井晃との対談(KAAT)でダンスのように言葉を発し、白井を混乱させた(ように見えた)ことがある(参照)。今回 NYと日本のダンス環境について極めて示唆的な発言をしたが、語り口は同じ。思考を言葉に変える際、その時の「肉体」で言葉を選択している。ダンスの即興における動きの瞬時の選択と、同質の緻密さがある。有益な内容、言葉そのものの面白さもさることながら、言葉を発する姿勢の純粋さに圧倒された(発言が急に跳んだり終わったりするため、理路整然と理解したい人には訳が分からないだろう)。

山崎の話

●18歳の頃やっていた電車の中での見えないダンス、バニョレ、スパイラルホールやシアターコクーンでの公演、伊東豊雄とのコラボ、ジャン・メイ・アコギとの出会い、NYでの生活。

●NYではジャンルが独立しているが、日本は横断的でコラボが可能。ヨーロッパは劇場が多くマーケット化しやすい、自分はマーケット的なあり方は好きでない、資本主義社会から遠い作品を作りたい。権力のヒエラルキー(劇場)をフラットにし、客とダンサーが同じ目線のオープンなパブリックスペースを作りたい。

●井上バレエ団でチュチュを20年間縫っていたことで、ダンス的な視点でファッションを捉えている。ダンスをやりつつ違うことを習得する、2つのことを同時にやることで独特の視点が得られる。

トヨタコレオグラフィーアワードに参加して、ダンサーが芸能人化していると思ったが、アワードがなくなりダンサーが孤立している。ダンスを中心としたコミュニティを作ろうと、ボディ・アーツ・ラボラトリーを設立した。これを基盤に、whenever wherever festival を開催している(昨年は4/26~29 北千住BUoyにて―参照)。

強烈に記憶に残っているのは、「舞踏をやっていた時、頭がちょっと弱いダンサーがいて、客はその方がエキサイトする」という言葉。山崎はかつてインタビューで、ものすごく踊れるバレエダンサーがいたが、最後は廃人になったと語ったことがある。踊りと狂気の結節点をリアルに語れるダンサーである。

 

【追記】

山崎は一昨年、バリシニコフ・アーツ・センターのレジデンシャル・アーティストに選ばれた。バリシニコフとの会話で、二人ともベケットの『ネエアンタ(ジョー)』を演じていることが分かったという。また昨年はグッゲンハイム・フェローシップに選ばれている。